「背番号10」が目を覚ました。山形は16日、長崎・雲仙市の「遊学の館」でJ2北九州と練習試合2試合を行い、1本目でFW長谷川悠(23)が2ゴールを挙げた。今季から、鹿島へ戻ったFW田代有三(28)のあとを受け、エースナンバーを背負う。新チーム初のJクラブとの対外試合で、若きストライカーが今季の活躍を予感させた。

 エースが「ゴールハンター」の片りんを見せた。前半5分、MF宮崎からのパスをトラップし、反転しながら左足でシュート。大きくネットを揺らすと、長谷川の顔に自然と笑みが浮かんだ。「トラップも含めて、理想通りのシュートだった」。自身の今年初ゴールを喜んだ。

 「予行練習」がはまった。試合直前の練習で小林監督からパスを受け、シュートを繰り返していた。そこで指揮官に「ボールが足元に入ったら反転もあるぞ」とアドバイスをもらった。わずか10分後、あっさりと結果を出した。

 後半終了間際には、冷静にPKを右隅に沈めた。仲間が勝ち取ったペナルティーエリア内での反則を、エースが得点に変えてみせた。「2点取れたし、良い感じです」。安堵(あんど)の表情を浮かべ、うなずいた。

 一昨年、J1初年度のチームを10得点で残留させた。一転して昨季はリーグ戦1得点(25試合)。周囲からは不満の声も聞こえた。だが長谷川は不調だとは感じていなかった。最前線で相手DFを封じながらボールを受け、味方が攻め上がる「ため」を作るなど、数字には表れない部分でチームに貢献していた。今年は田代から引き継いだ10番を背負うことで、数字も求められる。「良い感じで今日の試合戦えたんで、こっからです。ゲーム勘をもっと養いたい」と話す顔つきは、ゴールに飢えるストライカーの表情だった。まだ23歳と伸び盛り。得点を量産することで成長を証明する。【湯浅知彦】