マツ、起きてくれ!
急性心筋梗塞で意識不明の重体となったサッカー元日本代表DF松田直樹(34=JFL松本山雅)のもとに、全国から現役Jリーガーが駆けつけ、回復を信じて呼びかけた。緊急入院から2日目の3日、松田の古巣・J1横浜や名古屋、川崎Fなどの選手、関係者ら約50人が続々と長野・松本市内の病院を訪れ、松田を見舞った。各チームともリーグ戦(6、7日)を目前に控えるタイトな日程の中、早期回復を祈る思いを本人に直接伝えた。松田はこの日も集中治療室(ICU)で意識が戻らず、依然として厳しい状況にある。
松田の家族と病院側の配慮で、駆けつけた選手たちはICU内に通された。ベッドへ静かに横たわる松田に触れると体温が伝わってくる。「まだやり残したことがあるだろ!」「早く起きろ!」「試合中なんだぞ!」。聞こえているかは分からない。少しでも回復の力になればという必死の思いで、代わる代わる声をかけ続けた。
松田は依然、予断を許さない状況が続いている。2日のチーム練習中、心肺停止状態で緊急搬送されて以降、快方に向かっていない。この日、松本山雅の大月社長は「昨日と変わりなく非常に危険な状態です」と厳しい表情で説明した。心臓の鼓動が極めて弱く、血流と呼吸を人工心肺で維持している。リーグ戦直前のコンディション調整が難しい時期だったが、病状を伝え聞いた選手たちはいてもたってもいられなかった。
元横浜の同僚だった川崎Fの山瀬が、名古屋からは日本代表で一緒にプレーしたGK楢崎やDF闘莉王や田中隼、三都主、J2東京MF石川、水戸からも02年W杯日韓大会の戦友、FW鈴木らが訪れた。楢崎は両手で顔を覆ったまま、同僚の運転する車で帰途に就いた。プロ選手協会会長の千葉MF藤田は「今すぐにでも起き上がりそうな肌色だった」と声を絞り出した。
松田が昨季まで16年間所属し、現在首位の横浜は、選手やスタッフら約20人が片道4時間以上の道のりを急いだ。6日に2位柏とアウェー(柏)で大一番を迎えるが、この日午前練習前に、下条チーム統括部長が選手たちに松田の病状を報告。「週末に試合があることは全員が自覚している。頭の中で切り離すことはできないが、自分の中でコントロールしてほしい」と入院先へのお見舞いに理解を示した。選手たちの心情を察しての異例の対応だった。
前夜に松田を見舞って未明に帰宅し、この日の練習でフルメニューを消化したMF中村は無言でクラブハウスを後にした。同行したGK榎本も「マツさんについて話せる心境にありません」と口をつぐんだ。クラブ側は予定していたファンサービスを急きょ中止した。松本市までの往復は心身の疲労を蓄積するリスクを伴うが、木村監督は「俊輔は寝てなかったんやから。それでも、やらなければならないのがアスリートの宿命」と心情を察した。
ファンを含め、多くの人々の回復を願う思いは、松田に届くのだろうか。日本屈指のディフェンダーは今、奇跡を起こす闘いの最中にある。【松田秀彦、山下健二郎、保坂恭子】



