なでしこジャパンMF沢穂希(33=INAC神戸)が、日本コカ・コーラ社と3年のスポンサー契約を結んだことが26日、同社から発表された。沢が単独で広告契約を結ぶのは今回が初めて。契約金は推定で1億円。このビッグ契約を機に女子サッカー界の構造改革に着手する。CMなど契約依頼が来ている企業に中学生世代の女子チーム設立協力を要望。「私の契約金を抑えてでも」と訴えた。将来を見据えた女子サッカー界の象徴、沢の行動がなでしこジャパンの未来をアシストする。

 沢の視線の先はロンドン五輪だけではなかった。女子サッカー界の発展を懇願してきたパイオニアは、今が最大のチャンスとにらみ、早くも行動に移した。

 この日発表されたコカ・コーラ社の他、W杯以降、沢の元には多くの企業からスポンサー契約の打診が届いている。現在はリーグ戦中とあって、それら企業との契約交渉は所属事務所に一任しているが「私の契約金を少々抑えてでも、中学年代の女子チームを作るようにお願いしてください」と要望を出した。すでに実現へ向けて賛同する声もあがってきている。

 沢

 みなさんが注目していただいている今こそチャンスだと思う。私ができるのは、報道やスポンサー企業の方などに私が願っている中学生の女子サッカー環境増加を訴えること。企業の方が私の意向も理解してくれて、協力態勢を整えてくれようとしているのは本当にうれしい。一番の願いだった中学生がプレーできる環境が少しずつでも整っていけば、私の役割も少しは果たせているのかなと思っています。部活動でもクラブチームでもいいんです。

 人気、実力ともにうなぎ上りのなでしこだが、未来は決して明るくない。小学生までは女子も男子に交ざってプレーできるが、中学生以降は体力差も大きくなり現実的には無理だ。女子サッカー部がある中学や、クラブチームは極端に少ないため、他競技に転向せざるを得ない子供が多いのが現状だ。

 この日、発表されたコカ・コーラ社との契約は10月1日から3年。同社が事業を展開するすべての市場を含む世界契約とスケールもワールドワイド。沢が「サッカー人生の集大成にしたい」とするロンドン五輪以降、36歳まで続く異例の長期契約だ。契約金も推定1億円と今までの女子サッカー界からは考えられないような破格なもの。W杯前まで「月の食費は3万円で抑えられる」と話していた沢が自らつかんだジャパン・ドリームだが、沢はそのビッグマネーも女子サッカー界の発展のために尽くそうとしている。

 W杯優勝直後から「これで中学女子チームが増えてくれればいい」と訴え続けた。これに呼応するように、日本協会も動き始めている。文科省などと連携し、今月中にも中学年代の活動充実に向けた新プロジェクトが発足。加えて、沢の提言に賛同する企業が現れれば大きなうねりになる。

 沢が望むのは、これから先の女子サッカーの明るい未来像だ。その象徴となるのが元気な女子中学生がボールを追う姿になる。小学生からサッカーを始め、中学生でもボールを追い続けた沢が今、日本中から熱い視線を浴びている。沢の発信力は、大きな力を生む。沢がジャパン・ドリームをかなえたこの瞬間から、沢のライフワークともいえる次世代を支える沢プロジェクトが始まる。