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 クラブW杯:柏1-1(PK4-3)モンテレイ>◇準々決勝◇11日◇豊田ス

 世界4強だ!

 Jリーグ王者の柏が北中米カリブ海王者モンテレイ(メキシコ)との1-1で迎えたPK戦を制し、準決勝進出を決めた。中南米の各国代表がそろう相手に前半から劣勢に立たされたが、後半8分にMFレアンドロ・ドミンゲス(28)が先制ゴール。同点に追いつかれたが、PK戦ではGK菅野孝憲(27)が相手の1人目を止めて流れをつかんだ。日本勢の4強進出は07年浦和、08年G大阪に続き3チーム目。次は南米王者のサントス(ブラジル)との準決勝(14日、豊田ス)を戦う。

 相手が自分の目を見てこない。その時点で菅野は勝ちを確信していた。120分で決着がつかずに突入したPK戦。モンテレイの先行で1番手は主将のMFのL・ペレス。助走に入る。右足を振る。菅野はドンピシャのタイミングで左に跳んだ。そして、体全体でボールをはじき返した。

 菅野

 1球目にかけていた。集中していい対応ができた。

 ほえる。拳を突き上げる。チームに勢いをもたらすビッグセーブ。相手の4人目GKオロスコが右ポストに直撃して失敗すると、そのポストにまで感謝のおたけび。最後は5人目のFW林が成功すると、いの一番に駆け寄って歓喜の抱擁。クラブの世界一を決める大会で、柏の守護神がヒーローになった。

 圧倒された序盤戦。「最初の20分で落ち着いて対応できたのが勝利の要因だった」と胸を張った。チリ代表FWスアソに、元アルゼンチン代表のデルガドが絡む攻撃陣。いきなり猛攻を食らった。前半3分にはエリア内でフリーになったMFサンタナの至近距離からのシュートをはじき出した。最初の危機に好セーブをみせると、味方守備陣にも落ち着きが生まれた。

 179センチの身長。GKとしては大きくない。フィールドプレーヤーになる選択肢もあったはずだ。それでも「GKは手が使えるからそれだけで他の選手とは違う特別なポジション。自分、欲張りなんですよ」と話す。友達と野球をやれば進んでキャッチャーミットを持っていたという。他とは異なる特殊なポジションに心が奪われていた。

 安定したプレーの背景はたゆまぬ練習がある。練習後には室内で筋トレと交代浴。練習場を後にするのは最後。試合翌日のサブ組の練習試合を行っている脇のスペースで、シジマールGKコーチとシュート練習を繰り返していた。あまりのハードな練習に、相手チームの関係者が思わず尋ねるほどだった。「菅野って昨日、試合出てたよね」。練習はうそをつかない。菅野が口にする言葉だ。

 死闘を制し、次に挑むのはサントス。07年まで所属した横浜FCでチームメートだったFWカズ(三浦知良)がかつて所属したクラブだ。「練習はうそをつかない」を体現していた選手こそ、カズだった。菅野が最も尊敬する選手ゆかりの相手だが、「ん~、サントスでも大学生でも変わらないですよ。そういう姿勢がこういう結果につながるんです」。相手が誰でも変わらず全力投球してきたからこそ、この日のビッグセーブがあった。次のサントス戦でも“小さな”守護神の雄たけびが響き渡るはずだ。【阿部健吾】