<皇后杯:INAC神戸3-2伊賀>◇準決勝◇21日◇NACK

 INAC神戸のなでしこジャパンFW川澄奈穂美(28)が来季、米女子リーグに挑戦する意向を持つことが21日、分かった。スカイブルーとシアトル・レインの2クラブから獲得オファーが届いており、現在交渉中。INAC神戸は期限付きでの移籍を容認する方針で、条件面で最終合意に至れば来年8月までの約半年間、世界最高峰の米国でプレーする。INAC神戸は3-2で伊賀に逆転勝ちし、史上初の年間4冠に王手をかけた。明日23日に新潟との決勝に臨む。

 日本屈指の運動量と決定力を誇る川澄が、来季は世界最高峰の米国へ挑戦する可能性が高まった。過去、海外挑戦について「いつか行ってみたい気持ちはある」と話していた28歳はこの日、皇后杯4連覇に王手をかけた伊賀戦を終え、現在の心境を打ち明けた。

 「チームから話は聞いた。どんなことに対しても可能性はゼロではない。いい話ならゼロではないが、国内もしっかり盛り上げていきたいとも思う。でも、最終的には決めるのは自分」

 関係者によると、獲得オファーが届いたのは米スカイブルー(ニュージャージー州)とシアトル(ワシントン州)の2クラブ。今後、条件面で交渉予定だという。INACの代表選手の年俸は推定500万円前後。移籍すれば年俸は下がる可能性が高いが、日本協会に海外強化指定選手として認められれば1日1万円の補助金も出る。川澄が納得すれば交渉は一気に進む。

 来季からなでしこリーグの大会方式が変わることも追い風だ。全10チームでレギュラーシーズンを戦い、秋に上位6チームで優勝を決める。一方、米女子リーグのシーズンは4~8月までの5カ月間だけ。期限付き移籍なら9月以降はINACに復帰して、両国リーグで戦うことが可能だ。

 INACでは代表DF近賀がアーセナルへ、韓国代表MFチ・ソヨンも欧州移籍の可能性がある。DFベッキーは米ポートランドへ、FWゴーベルヤネズはシアトルに移籍する。チームは日本最強クラブに成長し、MF田中やFW京川ら若手との世代交代を進める必要もある。INACの文会長は「チームを支えてきたベテランには、レンタルの形で1年間海外を経験させてあげてもいい。戻ってきて、経験を還元してほしい」と話し、米挑戦を容認する方針だ。

 五輪3連覇中の米国のリーグは、FWワンバック(ウエスタン・ニューヨーク)らがそろう世界最高峰の舞台。なでしこジャパンは11年W杯こそ米国を破って悲願の優勝を飾ったが、昨年のロンドン五輪では米国に敗れ、銀メダルに終わった。15年W杯で2連覇、16年リオ五輪で悲願の世界一になるため、環境の変化を求める可能性は十分ある。MF澤ら先輩が進んだ米国挑戦の道を、川澄も選択することになりそうだ。

 ◆川澄奈穂美(かわすみ・なほみ)1985年(昭60)9月23日、神奈川県生まれ。日体大から08年INAC神戸入り。なでしこリーグでは11年得点王、11、13年MVP、ベストイレブンは4度獲得。日本代表通算50試合12得点。趣味は料理、裁縫。157センチ、49キロ。血液型A。

 ◆米女子リーグ

 正式名称はナショナル・ウーマンズ・サッカーリーグ(NWSL)。13年に発足。全8チームで構成され、今季はポートランド・ソーンズが優勝。米国協会は15年W杯カナダ大会の代表を、来季NWSLでプレーする選手の中から選ぶことを明言しており、米国の代表級が勢ぞろいする可能性が高い。米国では過去に全米女子リーグ(WUSA)が01-03年、米女子プロリーグ(WPS)が09-11年に開催されたが、いずれも経営難などで廃止に。とはいえ96年自国開催のアトランタ五輪で女子が正式種目にされて以降、米国は最強と呼ばれ続けている。