サッカー元日本代表MFの奥大介さん(38)が17日午前4時25分ごろ、沖縄県宮古島市で軽乗用車を運転中に交通事故を起こし、搬送先の病院で死亡が確認された。関係者によると8月ごろに宮古島へ移住し、リゾートホテルの調理場でアルバイトしていた。J1通算280試合出場の天才肌として人気を集めたが、昨年離婚した元夫人へのDV(家庭内暴力)騒動など、引退後は浮き沈みが激しかった。

 奥さんが38年の生涯を壮絶な事故死で終えた。沖縄県警によると、事故発生は17日午前4時25分ごろ。宮古島市上野宮国の県道で軽乗用車を運転中、対向車線にはみ出して電柱と衝突した。見通しの良い緩やかな左カーブ。電柱を折った先の雑木林で大破して止まった車の運転席で、意識不明のところを通行人に発見された。心肺停止状態で救急搬送されたが、骨盤を折るなど全身を強く打っており、蘇生しなかった。同乗者はおらず、街灯のない現場は夜明け前で真っ暗。ブレーキ痕はなかった。県警は死因や詳しい事故原因を調べている。

 一報は「ホテル従業員の事故死」だった。その後、身元が判明し、宮古島で働いていた近況も明らかになった。勤務先の高級リゾートホテルによると、8月下旬に調理補助のアルバイトとして採用され、皿洗いや容器準備などで調理師を支えていた。朝食を用意する仕事で午前5時から午後2時までの勤務。約7キロ離れた自宅から車で通勤しており、時刻から出勤途中だったとみられる。前日16日も出勤していたが、特に変わった様子はなかった。

 再起を図る最中の悲報だった。昨年6月、妻だった女優佐伯日菜子(37)へのDVで逮捕され、同7月に離婚。佐伯への6カ月間の接近禁止命令を受けた後は知人の家を転々とした。最後に身を寄せた兵庫県内の飲食店も「俺がいると取材が来て迷惑を掛ける」と去り、現役時代に毎年自主トレを行っていた宮古島を頼った。宮古サッカー協会の職員宅を訪れて子供を指導し、その際に「島の観光大使になりたいな」と笑って話すほど、愛着ある土地だった。

 約20年前から親交のある知人は、事故の約9時間前に本人と電話していた。「夜7時ごろ、笑いながら電話がかかってきたんです。明るい声で」。朝4時に起きて砂浜を走るなど、一時の荒れた日々を忘れるかのような生活を送り「飲食店を開く」夢のため修業していた。「今度、何か作ってやるよ」と料理の腕をふるう約束をし、11月に韓国旅行する計画もあった。明日19日の「エコアイランド宮古島マラソン」のハーフの部にもエントリー。「現役のころの筋力に戻ってきた」と生き生きし、現役、指導者を経た「第3の人生」への活力にあふれていた。

 94年に入団した磐田で黄金時代を担い、02年に移籍した横浜では03、04年のリーグ連覇に貢献。技巧派の攻撃的MFとして日本代表で国際Aマッチ26試合に出場した。07年の引退後は東京・多摩大目黒高の監督やJ2横浜FCの強化部長を歴任。しかし、体調不良や情緒不安定で長続きせず、近年は元夫人へのDV事件など浮き沈みの激しさがクローズアップされていた。

 ◆奥大介(おく・だいすけ)1976年(昭51)2月7日生まれ、兵庫県尼崎市出身。神戸弘陵高-磐田-横浜-横浜FC。攻撃的MFとしてJ1で280試合62得点、日本代表で国際Aマッチ26試合2得点。07年に現役引退。02年に女優の佐伯日菜子と結婚して2児をもうけたが、昨年離婚した。