東日本大震災で中断していたJリーグが約1カ月半ぶりに再開される。J1は今日23日と明日24日に計9試合を、J2も計10試合を実施。「チカラをひとつに。」のスローガンのもと動きだす。J1王者の名古屋は24日にアウェーで浦和との一戦に臨む。試合当日が30歳の誕生日となるDF田中マルクス闘莉王は「プロとしてやらなきゃいけないことがある」と決意。被災地復興、そしてチームのために勝利はもちろんゴールを目指す。

 震災で心を痛めた闘将が、戦いの舞台へ戻ってくる。明日24日の古巣浦和戦に向け、22日は愛知・豊田市内で調整。「今できることをピッチでやり尽くす」と言い切った。3月11日の震災後は「プロのサッカー選手以前に、人としていろんな事を考えさせられた」。中断期間中の今月14日には、被災地である茨城・水戸を訪問。小学校や古巣のJ2水戸を激励するなど、行動で人としてのあり方を示した。

 ただ、ここからはプロとしての仕事を果たす時だ。リーグ連覇に向け、ピッチ上でリーダーとしてチームをけん引。開幕戦はドローに終わっており、今季初勝利はもちろん得点も追い求める。

 「オレにはプロとしてやんなきゃいけない事がある。いつも言っているように、プロは結果を出すもの。結果がすべて。勝ちにいく姿勢を見せる」。

 再開には、これ以上ない舞台が用意された。相手は6年間在籍しながら、最後は戦力外同然の扱いで放り出された古巣浦和。場所は真っ赤に染まる完全アウェーの埼玉スタジアム。「オレを育ててくれた」と感謝する特別な場所だが、浦和を離れて以降、なぜか縁がなかった。故障や出場停止でまだピッチに立っていない。さらに試合当日は大台30歳の誕生日。何という巡り合わせだろうか。

 「何より、久々の埼スタだからね。いろいろとお世話になった人も見に来てくれる。そんなみんなが、喜んでくれるようにしたい」。

 日本国籍取得時に名前に「闘」の文字を刻んだ男は、いつ、どんな時でも戦う姿勢を貫く。チームは中断中のACL3試合で2勝1分けと調子を上げ、戦う集団へと一層まとまりつつある。未曽有の自然災害に負けじと復興に向け前を向いて戦う被災地との共通点はある。「プロ野球も始まって、サッカーも再開される。ちょっとずつ、普段通りの生活が取り戻せれば」。魂を込め、ピッチで勝利を追い求める姿勢が、闘莉王なりのメッセージだ。【八反誠】