<J1:清水1-0福岡>◇第7節◇23日◇アウスタ

 今季も「ゲンキ1発」でエスパルスがスタートを切った。清水がホーム開幕戦でFW大前元紀(22)の直接FK弾で今季初勝利を挙げた。0-0で迎えた後半35分、ゴールから約20メートルの地点から、相手、味方選手総勢10人の頭上を越える鮮やかなシュートを流し込み、昨季に続き初得点をマークした。3失点完封負けした3月5日の開幕柏戦から約1カ月半の中断をはさみ、アフシン・ゴトビ監督(47)の日本初勝利を飾った。

 大前がゴールを正面にセットされたボールの前に立った。目の前には相手選手7人の壁。さらに、相手GKの視界をさえぎるためにFW高原、MF枝村、DF岩下が壁に加わった。「リラックスして蹴れば入る」。すでに交代してピッチを離れたMF小野からのアドバイスを頭の中で何度も繰り返した。さらに「自信を持って蹴れ」と、DF岩下から声を掛けられ、頭をポンとたたかれた。短い助走で歩幅を合わせ、コンパクトに右足を振り抜いた。

 シュートは、緩やかな放物線を描きながら10人の頭上を越え、エスパルスサポーターが待ち受けるゴール左へ吸い込まれた。静まり返ったアウスタが大歓声で爆発。「あの距離はスピードがなくても越えれば入る。蹴った瞬間に入ったと思った」。ネットが揺れるのと同時に、サポーター席へ走りだしていた。

 大前

 この試合の重要性はみんなが理解していた。被災した人やサポーターの前でだらしない試合はできない。FWが点を取ればチームは勢いづくし、点が取れてよかった。

 昨季の開幕戦に続き2年連続のチーム第1号だ。しかし、ゴールの意味も大前にも明らかに変化がある。昨季は引き分けに持ち込むゴールだったが、今季は初勝利に導いた。そして、スーパーサブから今季は右FWに定着。エースとしてピッチに立ち続ける。大敗したオランダ遠征アヤックス戦後「通用する部分はあった。やれるという手応えの方が大きい」と、自信も芽生えてきた。同時に「試合に出るからには結果を出さないといけない」と、主力としての責任も感じるようになった。

 だから、ゴールを狙い続けた。後半40分、FW高原のシュートのこぼれ球に反応。同43分にもアレックスのパスからシュートを放つなど、チーム最多の3本のシュートを放った。「危機感を持って、試合に出たらいつでも全力でやるだけ。去年は最初は良かったけど、だんだん落ちていった。今年は年間通して活躍したい」。ピッチにはいつも元紀がいる。ゲンキが決めれば…清水が元気だ。【為田聡史】