<J1:浦和2-0甲府>◇第6節◇23日◇埼玉

 浦和が甲府を破り、「レッズの父」に勝利をささげた。17日に初代監督の森孝慈氏(享年67)が死去。喪章を着けて臨んだ試合は、前半に退場者を出しながらも、後半にDF平川忠亮(32)の今季初得点、MF柏木陽介(23)の2試合連続ゴールで快勝した。

 逆境を、チーム力ではねのけた。前半12分、GK加藤が飛び出し、ペナルティーエリア外で相手選手を倒して一発退場。ペトロビッチ監督はトップ下のFWエスクデロ・セルヒオに代えてGK山岸を投入し、全員守備で失点を防いだ。

 後半にチャンスが待っていた。同8分、MF柏木からのワンツーをDF平川が相手選手に倒されながら足に当てて先制。さらに同28分、MF柏木がFW原口のパスをダイレクトで相手DFの間をすり抜ける約26メートルの左足ロングシュート。きれいな放物線を描いて相手GKの手の上を通り過ぎ、ゴール右上に吸い込まれていった。

 柏木は開幕から先発出場を続けていたが、6月22日から4試合ベンチスタートを経験。試合に出られない苦しさの中でもがいていた。そんな時に平川から「うまくいかない時期もある。腐っていたら出られないだけだ」と声をかけられた。同僚の助けもあって壁を乗り越えての、2試合連続ゴール。「出られない時期を与えてくれた監督に感謝している。初心に帰ることができた。自分はスーパーな選手じゃないと分かった」。成長して、ピッチに戻ってきた。

 平川も、思いを込めたゴールだった。入団した02年からGMを務めていた森氏は、存在だけで雰囲気を変えてしまう温かい人だった。「気さくな方で、よく話を聞いてくれた。年間を通していい成績を残して、森さんにいい報告をしたい」と話した。

 守備では運も味方し、ポストやバーに何度も助けられた。ペトロビッチ監督は「すごく重要な勝利。ベンチから森さんが11人目の選手として戦ってくれた」と感謝した。【保坂恭子】