少しだけ、光が見えてきた。仙台FW柳沢敦(34)が来年1月1日の天皇杯決勝での復帰へ意欲を見せた。11月10日に左膝ガングリオン(良性腫瘍)を除去する内視鏡手術を受け、現在はリハビリ中。全治6週間と診断されていたが、絶望視されてきた今季中の復帰を目指して順調にメニューをこなしている。17日には天皇杯4回戦(対C大阪)を控えるチームに、またひとつ新たなモチベーションとなるかもしれない。

 来季へ気持ちを切り替えるのは、まだ早い。柳沢の目は元日のピッチを見据えていた。「チームが勝って(決勝に行って)くれれば、あと膝の方に問題なければ、まあ、可能性としてはあると思います」。慎重な口ぶり。それでも終始浮かべていた柔和な笑みには、確信めいたものがあった。

 手術後は「順調に来ています」と言い続けてきた。9日の第一声も同じ。実際、リハビリは滞りなく進行している。前日8日の練習では全体メニューに一部参加。復帰を焦り、無理にペースを上げているわけでもない。「(もともと)今年復帰できるようにと思ってやってるので」と、予定通りに来ていることを強調する。

 手倉森監督はかねて「1月1日に国立競技場を金色に染めたい」と話してきた。震災に見舞われたシーズンに、クラブとして初めて決勝へ行くことの意義。優勝して自力でACLの切符を勝ち取るという目標もある。そこにきて浮上した、主将柳沢の復帰プラン。決勝進出へ、がぜんチームのモチベーションは上がる。FW赤嶺は「ヤナさんに限らず、全員で(試合に臨みたい)という思いはある」と復帰舞台を整えることを誓った。

 柳沢は最後に「慎重に様子を見ながら、順調にやっています」とあらためて繰り返し、引き揚げた。チームの勝利を信じ、今はやるべきことに集中する。【亀山泰宏】