昨季、チームで最も飛躍したJ2山形MF太田徹郎(22)が、今季は10得点を狙う。4年目だった11年シーズンは26試合に出場し、リーグ初得点を含めて3ゴールを挙げた。今年の目標として、真っ先に口から出てきた言葉は「(得点を)2桁取ること」。さらにパサーとしての技術も磨くと宣言。「ゴールハンター」と「チャンスメーカー」を一手に引き受け、J1昇格に尽力する。チームは今週26日に、1次キャンプ地の静岡・御殿場に入る。

 「今年は、まずは点を取りたいですね。10点以上を目標に」。太田はいつものにこやかな表情ではなく、鋭い目つきでこう答えた。出場試合数、得点、アシスト。昨季はすべての項目でキャリアハイを達成した。対照的に、チームはJ2降格。「『あの時、自分が決めてれば…』っていうシーンが、結構多かった」。スタメンを勝ち取ったがゆえの悩みも抱えながら、1年間戦い抜いた。「決定的な場面はきっちり決められるようにしたいので」。10得点宣言の裏には、過去のシュートミスへの戒めの意味も含まれている。

 昨季の太田は、故障による離脱者が出る度にサイドハーフ、FW、トップ下など、ポジションを転々とした。悪く言えば「器用貧乏」だった。苦笑いしながら「特徴がないのが自分の特徴」と話すこともあった。それでも、チームのJ1復帰のためには「進化」が必要。特に、攻撃面での貢献を重要視し「ラストパスの精度を磨きたい」。今年は、パサーとして得点をアシストする。何より試合に出続けたことで、新たな可能性を模索することができた。

 ブレークしたことによる「慢心」は、太田にはない。地元・茨城県土浦市での自主トレは、近所のジムで筋トレを中心に行った。その際、正会員ではなく、5回2000円の「体験コース」を選択した。昨年も別のジムで同じことをしていたという。「体験版で十分っす」。最近では、太田の名前や背番号を貼り付けた手作りのうちわで声援を送るサポーターも増加している。その1人1人へ、丁寧にファンサービスする。どんなに出番が増えようとも「庶民派」を貫く22歳は、J1昇格へ向け、泥くさく汗をかく。【湯浅知彦】

 ◆太田徹郎(おおた・てつろう)1989年(平元)7月2日、茨城県土浦市生まれ。小学生から柏の下部組織でプレーし、柏ユースから08年に山形へ入団。ポジションはサイドハーフやトップ下に加え、ボランチ、FWと幅広くこなす。J1通算36試合3得点。J2通算3試合0得点。カップ戦通算8試合1得点。独身。176センチ、71キロ。利き足は右。血液型O。