<J1:鹿島7-0札幌>◇第12節◇19日◇カシマ

 得点力不足にあえいだ鹿島が、J1初の快挙を成し遂げた。ホーム札幌戦で7-0の圧勝。得点者7人の試合は、Jリーグ始まって以来最多記録となった。チームは前節まで3試合連続無得点でゴールから遠ざかっていたが、この試合から「ハットトリック賞」を新設し、OBの日本代表DF内田篤人(24=シャルケ)が駆けつけるなど、バックアップもあって得失点差も一気にプラスへ転じた。

 快挙へ口火を切ったのは、鹿島を後方から支えるDF岩政大樹(30)だった。前半9分に、インターセプトの勢いのまま駆け上がると、最前線に入った。「ゴールは貪欲に取りにいこうと思っていた」と岩政が、FW興梠のクロスを頭で流して今季初ゴール。「点を取ることは僕の仕事ではないですけど。あまりにいいボールだったので緊張してしまった」。普段は最前線にいるはずのない岩政から生まれた先制点。それは圧勝劇の序章でしかなかった。

 前節まで3戦連続無得点と、窮地に陥った名門だったが「幸せの黄色い帽子」効果が、選手の深層心理で働いたのかもしれない。この日の試合から、スポンサーのイエローハット社が特別予算を計上し、1試合3点決めた選手に賞金100万円を贈る「イエローハットトリック賞」を新設。後半に入って疲労度の増した相手に手を緩めず「オレも、オレも」とゴールを決めた選手は、交代選手も加わり7点で7人を数えた。

 今季は何度も得点者さえいなかったチームの公式記録には、7人もの名前がずらりと並んだが、はたして賞金狙いだったのか?

 「あぁ~、狙えばよかった」と悔しがる声もあれば「まったく忘れていた」との声も。だが、結果的に7人の得点者はJ1初となる大記録。1試合7得点も、クラブ史上3度目の快挙達成へとつながったのだから、結果オーライ。戦前までマイナス5だった得失点差も、一気に貯金生活へと転じたおかげで、順位は2つ上がった。

 ただ、まだ黒星が2つ先行して13位。さらに、4月28日のG大阪戦で5-0の大勝直後から、3戦勝ちなしという同じテツを踏むわけにはいかない。得点者はそろわなかったが、試合後の選手の口から出た「大勝の後が大事」という言葉だけは、足並みがそろっていた。【栗田成芳】

 ▼鹿島が19日の札幌戦でクラブ最多タイの7得点で圧勝。岩政、大迫、山村、興梠、本山、ジュニーニョ、遠藤と7人がそれぞれ1ゴールをマークしたが、1試合で1チームの7選手がゴールは、過去15度あった6選手を更新するJ1最多記録。鹿島の6選手ゴールは過去2度で、99年11月23日の平塚(現湘南)戦(6-0)、05年8月24日の新潟戦(7-2)で記録している。なお、J1の1試合チーム最多得点は磐田が98年4月15日のC大阪戦で記録した9点(9-1)。2位の8点は過去に3チーム。