<J2:山形1-0熊本>◇第10節◇21日◇NDスタ

 やはりこの男が救世主だった。山形が移籍後初スタメンのMF堀之内聖(33)の今季初ゴールで熊本を破り、連敗を3でストップ。5勝5敗で勝ち点15とし、12位から暫定7位に浮上した。07年に浦和でアジア・チャンピオンズリーグを制し、昨季も横浜FCをプレーオフ進出に導いたチーム最年長は、守備でも球際での強さを発揮。季節外れの雪の中、7戦ぶりの完封勝利に大きく貢献した。

 降りしきる雪を切り裂くスーパーゴールだった。0-0の前半43分、こぼれ球を拾った堀之内が左足で切り返して相手をかわす。「イメージ通りだった」と冷静に右足を振り抜くと、ゴール左隅に突き刺した。圧巻の一撃に「何度振り返っても、まぐれです。こんなシュート決めたことないんで」とプロ11年で9ゴールをマークしてきたベテランも苦笑い。3戦無得点と苦しんでいたチームに、欲しかった先制点をもたらした。

 本職の守備でも落ち着きが違った。序盤は「(奥野監督から)今日言われた」という1ボランチで先発。前半途中から「自分の横を使われ始めて、ベンチから指示があった」とダブルボランチに変わったが、すぐに対応した。中央のスペースを突かれる回数は一気に減り、コンビを組んだMF宮阪も「指示を出してくれるし、球際での迫力が違った」と脱帽。相手に寄せるタイミングとパワーは抜群で、攻撃の芽を摘み続けたが「まだ100点にはほど遠い」と文句なしのMVPにも満足することはない。

 まだやれることを証明したかった。横浜FCの躍進に貢献した昨オフ、待っていたのはまさかの戦力外通告。「トライアウトを受けられる心境じゃなかった。引退も考えた」とショックは大きかった。山形のオファーを受け、再起を誓った今季も体調不良でキャンプを離脱するなど悔しさばかりが募っていた。初先発の試合がボランティアのサポーターら約100人の懸命の除雪で開催され「本当に感謝しかない」と声援に手を振り続けた。堀之内の山形への恩返しは、ここから始まる。【鹿野雄太】