<ナビスコ杯:東京2-1新潟>◇1次リーグ◇15日◇国立

 東京MF石川直宏(32)が、夢に見た光景を現実に変えた。新潟戦の後半6分、先制点を決めた。Jリーグが開幕した93年5月15日から20周年を迎えた15日、メモリアルゲームと位置づけられた試合。あの川崎-横浜M戦を国立のスタンドで観戦した少年が、20年の時を超え、同じピッチで躍動した。チームも勝利した。

 20年分の思いを右足に乗せた。後半6分、左クロスに後方から飛び込んだ石川。ペナルティーエリア外から「これは行ける!」と鮮やかにそして力強く、国立のゴールを揺らした。両手を天に突き上げ、ホームスタンドへダッシュ。Jリーグ開幕20周年を記念するメモリアルゲームでのゴールは「いろんな思いがつまってました」。特別な思いが込み上げた。かつて見た光景に自ら立ち、そしてゴールを決めてみせた。

 20年前の国立、川崎-横浜M戦が原点だった。アウェー側ゴール裏。「間違いなく、すべてが変わった瞬間だった。何もかもが違った。『プロになって、ここでサッカーをするんだ』って、具体的なところまで考えた」。当時まだ12歳の小学6年生。夢を目標に変えた少年は、入場券を大切に保管した。20年たった今も「僕の原点なんです」と宝物にしている。

 何かと国立には縁がある。横浜ユースからトップ昇格したプロ1年目の00年、Jデビューもこの聖地だった。終了間際、当時鹿島の10番を背負ったMFビスマルクをマークするため、ボランチとして投入。「『ずっとビスマルクだけ見ておけ』って言われたんだけど、彼がCKを蹴りに行っちゃったときは、どこに行けばいいのか迷っちゃって」と、ちゃめっ気たっぷりに振り返る。そんなあどけない姿もいい思い出だ。

 前半にMF長谷川が負傷交代し、左腕には主将マークを巻いた。プロ14年目。今や32歳でチーム日本人最年長。「30歳超えるといろいろ考えます。うまい選手はたくさんいるけど、自分のプレーに何か魅力を感じてもらえるか?

 そういう選手であり続けたい。そうでなくなったとき、引き際なんだと思う。最近よく、考える」。後半37分に退くとき、右足首には激痛が走り、足もつっていた。無我夢中の82分だった。

 「自分からは代わりたくなかった。もっともっと『このまま走っていたい』って思っていましたもん」。試合後には、この日一番の大歓声。20年前の夢をかなえた自分に、そして夢をくれたJリーグに、花を添えた。【栗田成芳】

 ◆石川直宏(いしかわ・なおひろ)1981年(昭56)5月12日、神奈川県横須賀市出身。横浜ユースから00年に横浜加入。01年、U-20W杯アルゼンチン大会に出場。02年に東京移籍。04年アテネ五輪に出場(1試合出場)。同年、オールスター戦MVP。09年J1ベストイレブン。日本代表には03年12月の香港戦で初出場し、国際Aマッチ6試合出場。175センチ、70キロ。家族は夫人と1女。