<J1:横浜1-0広島>◇第29節◇19日◇日産ス

 横浜が「ハマのメッシ」の一撃で首位に返り咲いた。勝ち点で並んでいた広島との天王山は、後半10分に日本代表FW斎藤学(23)が得意のドリブル突破から右足で先制ゴール。このまま振り切った。リーグでは3カ月ぶりの得点で、9年ぶりの優勝へ大きな勝ち点3をゲット。日本代表の東欧遠征では出番がなかった悔しさを胸に、ザッケローニ監督を見返す1発となった。浦和はアウェーで鹿島を下し2位に浮上した。

 斎藤が均衡を破った。後半10分、左サイドでDF奈良輪からパスを受け、ペナルティーラインに沿うように右方向へドリブル。MF高萩を置き去りにし、DF塩谷が足を伸ばしてシュートコースを防ぎに来る。逆方向にも相手選手が立ちはだかるが、斎藤の動きが一瞬速い。ふさがる寸前の空間に、右足で強烈なシュートをぶち込むと、GK西川の右手を擦り抜けゴール左に決まった。「受けてからの流れが良かった。自分の形で取れた」。リーグでは7月17日浦和戦以来の得点だ。

 リズミカルなドリブルから正確なシュートを打てる選手は、今の日本代表では珍しい。しかし今月の東欧遠征ではセルビア、ベラルーシ戦ともに出番がなかった。普段は謙虚で多くを語らない斎藤が、この日ばかりは珍しく本音をこぼした。「悔しさだけの10日間だったんで。1分も出られなかった悔しさがあった」。

 リーグでの活躍で見返すしかない-。帰国の飛行機の中で切り替えていた。時差ぼけを解消するため、6時間もあったフランクフルトでの乗り継ぎ時間は、用意されたホテルに行かず、あえて町を散策。17日朝に帰国すると、午前中はクラブ練習に参加。午後は眠気を押して美容院に行き、髪の色を茶色に染めた。イスに座っていると睡魔に襲われたが、必死に目を開いて体内時計を調整した。

 帰国から2日後の大活躍に、日本代表で海外遠征の経験も豊富なMF中村も絶賛した。「(相手の守備を)『個』で突けるのは、さすが『和風メッシ』だな」。独特な言い回しで突破力をたたえた。

 残り5試合。04年以来の栄冠が見えてきた。これでクラブタイ記録の4戦連続無失点で、9月から5戦負けなし。斎藤は11月の欧州遠征について「今は考えてない」と言いつつも「マリノスでどれだけやれるか見せていかないといけない」と言った。【由本裕貴】