<ナビスコ杯:浦和0-1柏>◇決勝◇2日◇国立

 柏が浦和を下し、99年以来14年ぶり2度目の優勝を果たした。柏は前半終了直前にエースFW工藤壮人(23)が先制し、反撃を封じた。11年J1、12年天皇杯に続き、3シーズン連続で国内主要タイトルを手にした。今季は結束力を武器にアジア・チャンピオンズリーグでも4強入りするなど、「太陽王(レイソル)」が黄金時代の扉を開いた。決勝ゴールの工藤は大会MVPに選ばれた。

 決勝点は、やはりこの男だった。前半ロスタイム、右MF藤田の鋭いライナー性のクロスがファーサイドへと飛ぶ。FW工藤は浦和DF那須の背後へと抜け、頭を合わせた。「レイソルに関わるすべての人の気持ちが乗り移った」。エースがこの日、放った唯一のシュート。会心の一撃は、ゴール右へと吸い込まれた。

 浦和有利の下馬評を覆した。1週間前のリーグ戦では1-2と敗れ、この決勝は出場停止や故障で主力のMF大谷主将、山中、DF鈴木、キム、橋本の5選手を欠いた。そんな苦境で徹底したカウンター戦術で、勝利だけ求めた。代役の藤田がアシストすれば、茨田、谷口、太田も体を張って負傷者の穴を埋めた。1-0で逃げ切ると、ネルシーニョ監督は両手を高く空めがけて突き上げた。選手たちは肩を組み、輪になって踊った。工藤はお立ち台で「最高です!」と絶叫した。ネルシーニョ監督は「個人の気迫と戦術で勝てた。私の言うことを信じ、実行してくれたことをありがたく思う」と感謝した。

 今季は国内とACLとの過密日程を、総力戦で戦い抜いてきた。その経験が決勝でも生きた。10月30日の練習中、DFキムが大けがした。左足首を脱臼骨折し、救急車で病院へ。全治約4カ月だった。ケガの瞬間の音まで聞こえる痛ましい出来事にだれもが強いショックを受けた。だが決戦を前に、病院のキムからメールが届いた。足首を固定した写真とともに「頑張ってくれ」のメッセージ。選手の心はより1つになった。ゴールを奪った工藤は、ユニホームの下にキムの27番のシャツを着込んで戦った。結束力の柏を象徴する優勝だった。

 11年からのわずか3年間でJ1、天皇杯、ナビスコ杯を制した。これまで3大タイトルを獲得したクラブは柏を入れて7チーム。だがここ10年で“3冠”を達成できたのは鹿島とG大阪だけだ。柏は名門クラブと肩を並べ、今季はACLでも4強に進出した。工藤は「ここまでの結果には自信を持っていい。タイトルを取ったことで生まれるプレッシャーも楽しみながらやりたい」。「太陽王」柏が、常勝軍団への階段をまた1つ、登った。【千葉修宏】

 ◆柏レイソル

 1940年(昭15)に日立製作所として創部し、95年Jリーグ昇格。99年ナビスコ杯優勝が初タイトルとなった。しばらくリーグで昇降格を繰り返したが、10年にJ2優勝し翌11年にJ1初制覇。クラブW杯でも4位となった。12年度天皇杯優勝。かつてはカレカ(元ブラジル代表)ストイチコフ(元ブルガリア代表)らスター選手も在籍。レイソルはスペイン語の造語で、レイは王様、ソルは太陽の意。ホームタウンは千葉県柏市。