<J1:横浜0-2仙台>◇第7節◇12日◇日産ス

 ついに呪縛から解き放たれた。仙台がFW赤嶺真吾(30)の2ゴールで横浜を破り、今季公式戦9試合目で初白星をつかんだ。リーグ戦の勝利は昨年10月19日名古屋戦以来。渡辺晋新監督(40)は就任わずか3日で選手の個性を取り戻させながらチームをまとめ、初采配で結果を出した。

 長かった。苦しかった。試合終了の笛と同時に渡辺監督は拳を突き上げ、選手やスタッフと抱き合った。サポーターは涙を流しながら、現役時代と同じリズムの「ワタナベコール」を送り続けた。右手を上げて声援に応えると「ここが我々のスタート。これからも笑顔を与え続けられるように全員で戦います」と力強く誓った。

 「仙台のサッカーを取り戻そう」と望んだ試合で、沈黙していたエースも目を覚ました。今季初めてウイルソンと2トップを組んだ赤嶺が、前半から気迫を前面に押し出してゴールをうかがう。後半21分、MF梁の右CKを頭で合わせて待望の今季初ゴール。得意の形での先制点に「気持ちが良かった」と勢いに乗った。36分には、DF石川直のヘディングを相手GKがはじいたところを押し込んで2点目。12年の快進撃を支えた男が、渡辺監督の初勝利を決定づけた。

 ベガルタを救いたい。その一心だった。現役時代、1度は引退を決意していた渡辺監督に手を差し伸べたのが仙台だった。00年に経営危機に陥った甲府退団が決まった直後、熱心なオファーを受け現役続行を決意。加入1年目から主力センターバックとして36試合に出場し、初のJ1昇格を果たした。「仙台が救ってくれなければ、サポーターと一緒にこんな喜びを分かち合うことはなかった」。当時から仙台最大の武器だった「一体感」を監督として証明し、勝利で感謝を示したかった。

 全員が球際で体を張ってつかんだ初勝利。ウイルソンは「仲間の力になりたかった」と右足を痛めながら走り続けた。梁は「どんなに泥くさくてもいいから勝つのが、自分たちの戦い方」と言った。失っていた自信は取り戻したが、まだ1勝。渡辺ベガルタの挑戦は始まったばかりだ。【鹿野雄太】