<J1:広島1-2横浜>◇第12節◇15日◇Eスタ

 W杯の中断期間を終えて再開したJリーグで、日本の次期エースを目指す男が輝いた。横浜の日本代表MF斎藤学(24)が2得点に絡む活躍。後半45分に左足ボレーで同点弾を奪い、4分後には決勝点を演出して広島に逆転勝ちした。不出場に終わったブラジル大会の悔しさを胸に、4年後のロシア大会へ向けた決意をプレーで示した。

 斎藤が大逆転の立役者になった。1点を追う後半45分、DF小林の右からの浮き球パスを中央で受ける。右太ももでトラップし、倒れ込むようにして体をひねる。落とした球に左足のボレーで合わせ、ゴール左に流し込んだ。チームを救う同点弾。距離や形こそ異なるが、W杯得点王のコロンビアMFロドリゲスがウルグアイ戦で決めたスーパーボレーのような、よどみない流れ。「無心だった。瞬時に体が反応した」と自分でも驚く芸術弾となった。

 さらに後半ロスタイム4分、DF栗原がパワープレーで競り勝った球にゴール前で反応。最終ラインの裏へ抜け出し、GK林をかわしにいく。足元に飛び込まれて阻まれたが、キャッチまではさせない。こぼれた球をFW伊藤が無人のゴールに蹴り込み決勝点。斎藤が試合をひっくり返した。

 失意を振り払う再開試合だった。途中出場で流れを変える切り札としてW杯メンバーに入ったが、攻撃的な選手では唯一の出番なしに終わった。タッチラインをまたげなかった悔しさを隠さず「見てきて終わりじゃ意味がない。W杯に行って感じたことを自分に還元しなければ」と決意した。

 帰国後、汗をかいて切り替えた。オフは5日間だけで3日にチーム合流。5日のJ3町田、6日のJ2湘南との練習試合に、異例の2日連続で途中出場した。12日の天皇杯2回戦ホンダロック戦も出た。代表では米国でのザンビア戦に途中出場しただけ。試合勘を取り戻そうと懸命に走った。

 そして、5月18日のリーグ川崎F戦以来約2カ月ぶりのフル出場。「きつかった。ほとんどボールに触れなかった」と反省したように、得意のドリブルを封じられた。それでも「最後に仕事するのは気持ちいい」と笑顔で復帰戦を飾った。

 W杯で「必ず結果を残す選手が、いい選手」と感じた。そうなるために「日々を大切にしたい。自分は4年後を目指さなければいけない」。まずは3月8日の清水戦以来12戦ぶりのリーグ2点目でチームを9位に浮上させ、ロシアへの1歩を踏み出した。【木下淳】