<J1:清水1-0徳島>◇第19節◇9日◇アイスタ

 勝利時恒例のダンス「勝ちロコ」の中心に、大榎克己新監督(49)がいた。現役最後の勝利となった02年11月24日の鹿島戦以来、4276日ぶりにつかんだJリーグの白星。同時に達成したホーム通算200勝、同600得点に揺れるサポーターと一緒に初勝利をかみしめた。スタジアムに響く「克己」コールに、両手で応えると「現役の時の初勝利は覚えていないけど、この勝利は忘れられない1勝になる」と、笑った。

 采配が際立った。指揮官はこの日、大敗した前節東京戦からシステムを変更。1ボランチから2ボランチに変えた。「長いボールでシンプルに攻めてくる相手に、セカンドボールを拾われると、どうしても押し込まれる。選手にも試合前に意識するように伝えたが、よく対応してくれた」。ロングボール主体の徳島に対して練ってきた対策がはまった。序盤からこぼれ球を制圧し、主導権を握った。

 こう着状態を崩せずにいると、後半16分には積極的に動いた。「前半はバイタルエリアに進入できていたが、そこから背後を突く動きがなかった」と判断し、早々とFW村田を投入。そのわずか8分後に、ゴール中央でパスを受けた村田が決勝点をたたき込んだ。

 それでも、喜びは一瞬だった。試合後の会見で今後の意気込みを問われると、迷わずに言った。「まだすぐ次の試合がある。今日勝ちはしたが、修正しなければいけないことはたくさんある。その繰り返しでしかチームは強くならない」。次節仙台戦に目線を向けた。

 7月30日に就任が発表されると、100通以上のメールが届いた。大半が清水のOBからだった。11年に現役時共にプレーした真田雅則さんが43歳で、13年にも山田泰寛さんが45歳という若さで他界した。試合前「志半ばでこの世を去った仲間を思えばこんなプレッシャーたいしたことない。関係者の思いにも応えていくだけ」と、覚悟を決めて監督を引き継いだ。

 スタートとなる1勝はつかんだが、満足感はない。この先も、始まったばかりの再建への道のりを全力で突き進む。【前田和哉】

 ▼ホームJ1通算200勝

 清水が9日の徳島戦で達成。鹿島(234勝)に次いで史上2チーム目。366試合目の到達で45分け121敗。アウェーでは通算156勝で、こちらは鹿島の174勝、横浜の167勝に続く3位。