<J2:湘南4-2水戸>◇第32節◇20日◇BMWス

 J2湘南が、圧倒的な強さでJ1復帰に「王手」をかけた。水戸をホームに迎え、開始1分にFW武富孝介(23)のゴールで先制。3点リードから1点差まで迫られたが、MF永木亮太(26)の30メートル弾で4-2と振り切った。勝ち点を83と伸ばした湘南は、23日にアウェーで京都と対戦。勝てば、3位磐田の引き分け以下で9試合を残しての史上最速昇格が決まる。

 湘南は強かった。水戸に1点差と迫られても焦りはない。後半31分、MF永木が右足で30メートルのミドルシュート。粘る水戸を振り切って「コースが見えた。みんなが集中して、一丸となったのが勝因」と、笑顔で振り返った。負けこそないものの、実はホームではここ3試合引き分け。4試合ぶりの勝利で「勝ててよかった」と、GK秋元はサポーターの歓喜に応えた。

 「勝ち点80で昇格」。チョウ・キジェ監督(45)が掲げた開幕前の目標だった。開幕から14連勝するなどした頃には上方修正し「最速でJ1に昇格しよう」と選手に言い続けてきた。監督の言葉通りに勝ち続け、ついに次節にも昇格決定。あまりの独走ぶりに、監督をはじめ選手たちも「別に、緊張はない」と、余裕たっぷりだった。

 もっとも、舞台裏は「最速」にバタバタしてきた。クラブがJ1基準かを示す15年度の「クラブライセンス」発表は28日。たとえそれまでは、仮に2位以内が決まっても「昇格」とは言えない。通常なら「ライセンスを持つクラブが2位以内になり昇格」だが、湘南は早すぎた。昇格が決まっても「記念グッズ」さえ売れないが、大倉社長は「こんなに早いと思わなかったので」と苦笑いした。

 攻撃も守備もアグレッシブ、全力でボールを奪い、奪ったら速くゴールを目指す-。サッカーのスタイルは、昨年のJ1で16位に終わった時と変わらない。チームにとっては「昇格」も「優勝」もJ1で再びプレーするための過程。「僕らはJ1の19位だから」と言ったチョウ監督。昇格するスピードの勢いで、J1の舞台でも走り回るつもりだ。【荻島弘一】

 ◆湘南のJ1昇格

 次節23日に湘南が京都に勝ち、3位磐田が水戸と引き分け以下だと両者の勝ち点差は27よりも大きくなる。残り9試合での逆転が不可能になるので、2位以内の確定する湘南の昇格が決定。湘南は引き分けても、磐田が負ければ昇格となる。次節で昇格が確定すれば残り試合数は9試合で、04年の川崎Fが記録した残り8試合(9月26日)を更新。日付でも08年の広島の9月23日(残り8試合)と並び史上最速となる。

 ◆Jリーグクラブライセンス

 Jリーグが13年から実施しているプロクラブの資格制度。組織やスタジアムなど設備、経営面などについて細かく基準を設け、J1、J2それぞれのライセンスを交付する。13年9月30日に発表された今年度は、36クラブにJ1ライセンス、7クラブにJ2ライセンスが認められた。湘南も今年度のJ1ライセンスは持っているが、仮に28日に来年度のライセンス申請が却下されれば来季J1でプレーすることはできない。