世間ではよく、黒猫を不吉なものとして語ることがある。特に欧州では不幸のシンボルとされ、目の前を黒猫が横切ると、何か良からぬことが起こるという迷信がささやかれ続けている。

 賭け事の世界でも黒猫はバッドラックの象徴とされ、例えばカジノへ向かう際に黒猫を見たギャンブラーは、そのままUターンして家路につくことも多いという。

 その黒猫が、突如サッカー場に登場した。24日のスペインリーグ第1節・バルセロナ-エルチェ戦。試合開始直後、バルサの本拠地カンプノウのピッチに乱入すると、バルサのゴールやベンチ、エルチェ陣内と縦横無尽に走り回った。

 最後は係員の手によってコーナー付近で捕らえられ、その後、その手をすり抜けて通路方面へ逃げていった。スタンドからは大歓声で、バルサベンチのルイスエンリケ監督も大笑い。試合は再開された。

 覇権奪回を狙うバルサはこの日、W杯ブラジル大会で肛門が裂けるほどの奮闘を見せ、アルゼンチンの準優勝に貢献したMFマスケラーノが、前半44分にレッドカードで一発退場。いきなり黒猫のたたりかと思われた。

 だが結局メッシが2得点。次代のエースと呼ばれる18歳のFWエルハダディも開幕スタメンの期待に応え、スペインリーグ初ゴールを決める活躍で、3-0の勝利に貢献した。この日に限って言えば、黒猫はバルサにとっては幸運のシンボルだったのかもしれない。

 今季のバルサは、6季ぶり無冠に終わった昨シーズンの雪辱を期すべく、クラブOBのルイスエンリケ監督が就任。ウルグアイ代表の“かみつき”スアレスやクロアチア代表MFラキティッチらを獲得し、ライバルRマドリードや、昨季リーグ戦覇者Aマドリードを打倒することに執念を燃やしている。

 勝利へのカギは、選手たちのコンディション。W杯で腰椎を骨折したブラジル代表FWネイマールや、プレー中の嘔吐(おうと)ぐせが治らず、昨季は体調維持に苦心したメッシらを、シーズンを通じて万全の状態に保てるかがポイントとなる。ファンもそれを分かっていて、エルチェ戦ではメッシが守備をしただけで拍手が起こったほどだった。

 現在、バルサを取り巻く環境は厳しい。18歳未満の選手獲得に違反があり、FIFAからは来年1月および、来夏の移籍市場で新たな選手の獲得禁止を命じられている。そんな中で迎える今季。チームにとって、この日の黒猫が幸運のしるしだったのか、はたまた不幸のシンボルだったのかは、シーズン終了後に分かるだろう。