<欧州CL:(4)バルセロナ1-0セルティック(2)>◇4日(日本時間5日)◇決勝トーナメント1回戦第2戦◇スペイン・バルセロナ※カッコ内は2戦合計得点

 【バルセロナ(スペイン)=山本孔一通信員】セルティックMF中村俊輔(29)が、夢のカンプノウを沸かせた。バルセロナ戦の後半ロスタイムに強烈なミドルシュートを放ち、7万5000人の大観衆をどよめかせた。チームは0-1の完封負けで2戦合計2-4となり、2年連続の16強敗退。それでも中村はトップ下でフル出場し、「純粋に楽しかった」と満足感たっぷり。約10年前には観客として「聖地」を訪れた男は、大舞台で欧州の一流選手に成長した姿を誇示した。

 最後に大きな見せ場をつくった。中村は右サイドからドリブルで中へ切れ込み、強烈な左足シュート。惜しくもGKビクトル・バルデスの右手に阻まれた。一流同士の高レベルな攻防に、どよめきが起こった。

 中村

 ニアを狙ったけど、ファーなら入っていたと思う。その前にセンタリングを上げたから、このまま終わったら悔いが残ると思った。同じ形が来たので、狙っていこうかなって。顔を上げて、すぐ(シュートと)決めていた。

 セルティックは奇跡の2点差勝利を中村に託した。突然のトップ下起用だった。49回のボールタッチでパス成功率86%。前半11分には相手を背負いながらヒールパスをつなぎ、カウンターの起点になった。中盤で2人を軽やかにかわす場面もあった。表情、動きは躍動感にあふれていた。

 中村

 午前中の練習でトップ下で、と言われた。移籍1年目の最初以来。楽しかったよ。すぐ後ろにタッチラインがあるのと、360度まわりを見ながらやるのとは違う。バルサ相手でトップ下、それだけでうれしかった。初戦は個人的なミスが多かったから、それに比べれば断然よかった。スルーパスが出せず、前に運べなかったのは残念。

 欧州進出の「原点」カンプノウのピッチに初めて立った。97年11月、横浜時代の合宿で観光客としてバルサ戦を楽しんだ。その時、誰からも存在を気づかれず、自らの小ささを実感。欧州で活躍する夢を抱いた。

 中村

 初めて来た時より狭く感じた。ピッチが思った以上にすごくよくて日本に似ている。ボールがよく走る。(芝が)短くて固くてぬらしてあって。スコットランドが今すごく悪いから。おれ、難しいところでやってんのかなって。

 7万5000人も入ったカンプノウを沸かせ、最後に視線をくぎ付けにした。敗れはしたが、「ちっぽけな」存在だった自分が、バルサの敵役として注目されるまでに成長。29歳の中村は、それが「純粋に」うれしかった。