<セリエA:ジェノア0-1インテルミラノ>◇13日(日本時間14日)◇ジェノバ

 インテルミラノの日本代表DF長友佑都(25)が、初ものずくめのゴールでチームを2連勝に導いた。ジェノア戦に左サイドバックでフル出場。後半22分、MFアルバレスのクロスを頭で押し込み、10日のフィオレンティナ戦に続くゴールを奪った。2戦連続得点も、ヘッドでの得点も、プロでは自身初。決勝ゴールもセリエA移籍後初めてだった。波に乗れないチームを7位に押し上げる活躍で、18日の古巣チェゼーナ戦へ調子を上げてきた。

 まるでストライカーの嗅覚だった。左サイドで気配を消しながら、長友はペナルティーエリア内へと忍び込んだ。右サイドのアルバレスから、低く鋭いクロスが入る。「彼の左足ならあのポイントに来ると感じた」。イメージ通りのボール目がけ、170センチの体で目いっぱいにジャンプ。完璧なタイミングで、頭に合わせた。

 重苦しい均衡状態を破る、鮮やかな1発。MFカンビアッソにおんぶされ、DFサネッティとはお辞儀のパフォーマンスで、喜びを分かち合った。「ゴールを決めて負けたら意味がないんで、今日は自分で決めて勝てたというのがすごくうれしい」。後半ロスタイムには、相手FWロッシのシュートをゴール前でヘディングでクリアした。攻守にわたる活躍に、ラニエリ監督からは「非常に注意深い選手。攻守によく参加し、完璧な選手だ」と最大級の賛辞を贈られた。

 ヘディングでの得点も、2戦連続得点もプロでは初めて。Jリーグでも代表でも未経験の快挙を、世界最高峰リーグでやってのけた。「初」はそれだけではない。決勝点は自身セリエA「初」、今年3月に自身「初」ゴールを決めたジェノアが相手、というのも何かの因縁のようだった。

 中位に甘んじるチーム成績と同調するように、長友もここまで体調は決して良くなかった。開幕前には右肩を脱臼し、右ふくらはぎにも不安を抱えてもがき続けた。満足なプレーができず、地元メディアには「去年の(好調だった)長友のスタントマンだ」と、ニセモノ扱いされる始末。そんな中でも、「試合に出ているからこそ、(悪くても)評価される」と、前向きな気持ちは失わなかった。

 次は18日のチェゼーナとのアウェー戦が待っている。日本を離れた自分を受け入れ、ビッグクラブ移籍の足掛かりをつくってくれた古巣へ、約8カ月ぶりに凱旋(がいせん)する。「思い出が詰まったスタジアムなんで、楽しんで暴れたい。3試合連続ゴールできるように、まずは失点しないように頑張る」。相手選手にねだられ、試合後には背番号55のユニホームを譲った。ガッチリ固定された右肩の青いテーピングが、激戦の勲章のように光っていた。【波平千種通信員】