陸上男子100メートルで日本歴代2位の10秒01を持つ桐生祥秀(19=東洋大)が、復帰戦で優勝した。追い風0・5メートルの決勝でスタートからリードを保って10秒19でフィニッシュ。リオ五輪参加標準記録の10秒16に届かなかったが、同種目で初の学生日本一。2走を務めた400メートルリレー決勝は6位。右太もも裏肉離れで4カ月ぶりの大会だったが、2日で5レースをこなし復活の足掛かりをつかんだ。

 初の学生王者は通過点だ。「日本の学生で2番だったら、何をいっても雑魚だし、ヘボい。若手とかいっていられない。世界大会に慣れる、とかいっているうちに(世界は)どんどん速くなる」。4カ月ぶりで10秒19の優勝も「勝つことが最低条件。タイムは全然ダメで、納得していない」。

 土江コーチに「思い切りいこう」と指示された決勝。序盤からリードして危なげなくフィニッシュした。ただリオ五輪参加標準記録10秒16に届かずに「次はスカッと一瞬でいきたい」。

 5月30日の練習で右太もも裏肉離れ。練習再開まで6週間も、1週間で回復した感じがした。「もう痛くない」。世界選手権につながる6月の日本選手権出場を考えた。周囲にストップされて納得したが、無念が募った。この日も「楽しい」を連発。「子どもみたいな言い方ですが。世界選手権をテレビで見て同級生、先輩が出ていて…。試合に出てないので、楽しくなかった」。他の部員が吐いた過酷な坂道ダッシュを反復。その引き締まった体を、土江コーチは「ボディービルでいえば『キレてる』という状態」と表現した。

 2日間5レースを完走。「ジェット桐生」は「ここに200メートルが増えても大丈夫。強さを身に付けるためにずっと勝つ姿勢でいる」と宣言した。【益田一弘】