<アジア大会:陸上>◇女子100メートル決勝◇22日◇中国・広州

 陸上女子の福島千里(22=北海道ハイテクAC)が44年ぶりに歴史の扉を開いた。本命として臨んだ100メートル決勝で、前回覇者のフビエワ(ウズベキスタン)に0秒01差の11秒33で競り勝った。同種目の日本選手として66年バンコク大会の佐藤美保以来、史上4人目の金メダルを獲得。ほぼ同着で、ゴール後は「私じゃないと思った」としかめっ面だったが、関係者から日の丸を投げ込まれて、やっと状況を把握した。

 先行逃げ切りが必勝法。だがスタート反応は8人中5番目と出遅れた。それでも伸びた。今季、1秒間で4・7歩の高速ピッチを落とさずストライドを伸ばす課題に向き合った成果。ゴール目前で差し切った。「必死で自分のレーンしか見えなかった。本当に勝ててよかった」と息をついた。

 左足首にはテーピング。大会前、ウオームアップのバスケットで負傷した。予選後に「ケガ?

 そうみたいですね」と人ごとのように答えた。繊細な感覚が必要な種目だが、ずぶとかった。バスケットでも経験者に交じり野性味あるプレーを見せる。中村宏之監督は「トリッキーで予想外な動きをする。バスケでも意外性がある」とアスリートとしての特性を挙げる。

 200メートル、400メートルリレーとの3冠も期待される。短距離では82年大会で磯崎公美が4冠(200メートル、400メートル、400メートルリレー、1600メートルリレー)を達成したが、福島が挑む3種目では日本人初の快挙となる。「また44年ぶりとかにならないようにしっかりやりたい」。五輪の前にアジアのタイトルを総なめにする。【広重竜太郎】