陸上男子100メートルで日本人初の9秒台を狙う桐生祥秀(よしひで、17=京都・洛南高3年)が、世界切符に挑戦する。今日7日開幕の日本選手権を前に6日、東京・味の素スタジアムで練習。高速トラックの感触に手応えをつかんだ。今日7日の予選を通過し、明日8日の決勝を走りきれば世界選手権(8月10日開幕、モスクワ)の代表が決定。桐生は「順位、タイムは考えない。全力で走ります」と全開スプリントを誓った。

 桐生は、本番と同じコールをスターターに求めた。「オン、ユア、マーク」のアナウンスに、第6レーンのスターティングブロックで構えた。両膝をついて、いつものようにネックレスの位置を整える。「セット」の声に腰を上げ、号砲とともに右足を踏み出した。約20メートルまで飛び出し、にっこり笑顔で練習を終えた。

 「走りがかみ合ったのでいいかなと思います」

 初見参の味スタに、好感触を抱いた。同トラックは高速といわれる大阪・長居スタジアムと同じ仕様。しかもトラックの使用は今大会で3度目。ほぼ新品に近いタータンという好条件に、日本人初の9秒台突入の期待も高まる。

 桐生も戦闘モードだ。「順位、タイムは考えていないです。全力で走ります。予選で気を抜くとだめなので」と気合十分。2日までの高校総体京都府予選は3日間で9レースの過密日程、相手も高校生だった。今大会は7日に予選、8日に決勝と1日1本。「憧れの選手」という山県、江里口のロンドン五輪組もエントリーしている。「(決勝は)予選の後に考えます」と、全開スプリント宣言だ。

 日本代表のユニホームは目の前だ。4月29日の織田記念国際で日本陸連の派遣設定記録の10秒01をクリア。8人の決勝に残り、レースを走りきれば代表が決定。既にロシアへの渡航に備えて、パスポートも取得。憧れの世界切符がかかって、爆発の予感が漂う。

 日本王者を争う舞台。総体京都府予選が終わった2日に散髪した。伸びかけた髪をあらためてきれいな丸刈りにしてスイッチオン。レース前日の恒例行事である、大好きな抹茶もごくりと飲んで「桐生ジェット」の燃料も満タンだ。中4日のレースに向けて「今日のアップも思ったより体が動いた。疲労はないです」と言い切った。【益田一弘】

 ◆世界選手権の代表選考

 日本陸連が独自に決めた派遣設定記録を突破し、日本選手権で8位以内に入れば自動内定。5人に資格がある(女子1万メートルで突破の福士加代子はマラソン代表が決定)。国際陸連が設定した参加標準記録A突破者は、日本選手権で優勝すれば代表決定となる。男子ハンマー投げの室伏広治は前回優勝者として出場資格を有する。これ以外はA標準、またはB標準突破者の中から理事会で選考される。