<陸上:第90回箱根駅伝予選会>◇19日◇20キロ◇陸上自衛隊立川駐屯地~立川市街地~国営昭和記念公園

 名門・中大が、やっとの思いでピンチを回避し、連続出場回数を「85」に伸ばした。春先から主力の故障が続出し大苦戦。10時間14分12秒で何とか12位に滑り込み、88回目の本戦出場を決めた。昨年までなら落選も、90回記念大会のため出場枠が4校増枠。この強運を箱根路に生かす。

 素直に喜びを爆発させたい。でも、それは名門ゆえに許されないのか。「第12位、中央大学!」。広大な公園内に響くアナウンス、取り囲むOBら関係者の大歓声。6連覇を含む最多14度の優勝を誇る中大戦士は、重責からの解放感に浸るのが精いっぱいだった。

 ただ1人、泣き崩れた男がいた。主将の代田修平。「こんなにも緊張するのかと…。大会が近づくにつれて箱根に出られなかったらどうしよう、歴史をつくった先輩に申し訳ない…」。前夜は「自分が引っ張るから付いてこい!」と宣言しながら、ふたを開ければチーム9番目のタイム。「何度も気持ちが切れた」と号泣は止まらなかった。

 その代田は3月中旬に左足首を捻挫後、ストレス性胃腸炎で入院も味わった。途中棄権となった今年の箱根8区で“幻の区間賞”を取った永井も左足故障でこの日は8キロ地点で応援。控えで臨んだ前週の出雲駅伝も、3人が故障のため主力級3人が急きょ出走。その3人がこの日、失速した。予選会出場は29年ぶり。選手はもちろん、この時期にピークを合わせる調整法はスタッフさえ手探り。忍び寄る重圧も故障者を続出させ、窮地を招いた。

 出場校増枠による強運。そこに救いは残された。昨年、5区で途切れたたすきを「悔しさを忘れないために」(代田)額に入れ寮の白板に掲示。途中棄権したOB野脇の「頼んだぞ」の思いも胸に刻だ。「目に見えない重圧」(浦田駅伝監督)もはねのけた。呪縛が解けた、と思えばいい。雪辱の舞台まで、残り2カ月以上もある。【渡辺佳彦】

 ◆予選会

 各校12人が出場し20キロを走る。昨年まで採用されていた「関東インカレポイント」による減算タイム制度が廃止され、チーム上位10人の所要合計タイムの少ない上位校が本戦出場権を獲得。来年は90回記念大会で、関東学連選抜も廃止されたため、昨年までの9校に4校増の計13校が予選を通過した。