<全国高校バスケット選抜優勝大会:山形商75-70足羽>◇26日◇女子準々決勝◇東京体育館

 山形商(山形)が足羽(福井)に75-70で逆転勝ちし、東北勢女子の単独校としては35年ぶりとなる、2年連続ベスト4入りを果たした。4点を追う第4クオーター(Q)に、チーム内で「ノア」(救世主)の愛称を持つ武田灯(あかり、2年)が途中出場し8得点。逆転4強に導く立役者になった。

 劣勢のコートに「救世主」が舞い降りた。51-55で迎えた第4Q残り9分21秒。高橋仁監督(51)から「いつもの強気なプレーで流れを変えてこい」と送り出された武田が躍動した。積極的なドライブで2ゴールを続けて奪取。さらに残り2分34秒、68-68の同点に追いつく3点シュートを沈めた。

 前半は7点リードで折り返したが、第3Qで逆転された。窮地を救ったのが仲間から「ノア」と呼ばれる武田。入学時に1学年上の先輩から各選手に付けられるコートネームだが「『ノアの箱舟』って、物語だったんですか?」と由来までは詳しく知らない16歳が、3連続ポイントで流れを引き寄せた。「よく物おじしなかった」と高橋監督から褒められたが、武田は「緊張で顔、真っ青でしたよ」と無邪気に笑った。

 山形一中時代は主将としてチームを東北3位に導き「高校でも救世主になってほしい」と高校入学時に名付けられた。この日、一緒にコートに立った山川華奈(3年)に誘われ、日本代表ガード大神雄子(26)と同じ「うめばちミニバス」で育った。山川は「要所でシュートを決めてくれる子です」。昔から「救世主」の雰囲気を持っていた。

 1歳上の兄光は、山形中央高サッカー部に所属する3年生。30日開幕の全国高校選手権に山形県代表として出場するDFだ。兄から「頑張ってこいよ」と激励され、一足先に立った全国舞台で活躍した。

 27日の準決勝は桜花学園(愛知)と対戦する。武田は「山商らしく挑戦して、途中出場からでも3年生の力になりたい」と言った。王者が相手でも、再び救世主になるつもりだ。【木下淳】