自動車F1シリーズを統括する国際自動車連盟(FIA)が進める来季のコスト削減策にトヨタやフェラーリ(イタリア)が反発、撤退をほのめかす騒ぎとなっている。ただ、金融危機によるスポンサー離れでコスト削減は急務でFIAは苦しい対応を迫られそうだ。

 ▽60億円以下に

 「F1の価値にかかわる問題。変更がなければ、来季は参戦しない」。トヨタチームのハウェット社長は9日、FIAのコスト削減策を批判した。

 削減策は4月末に決まり、年間予算が4000万ポンド(約60億円)以下のチームにはエンジンの回転数制限をなくすなど技術的なメリットを与えるのが柱だ。

 削減策に応じるかは任意だが、有力チームの年間予算は300億-500億円といわれ、大幅削減は不可能な数字。異なる規則で製造されたマシンが“世界最速”を争うことにもなり、フェラーリも12日に「すべてのチームが同じルールで戦うべきだ」との声明を発表した。

 ▽駆け引き?

 FIAがコスト削減を急ぐ背景には、ホンダの撤退や大手金融機関を中心にしたスポンサー離れがある。2月に米国を拠点とする新チーム「USF1」が来季から参戦する計画を発表したが、年間予算は約6400万ドル(約62億円)。削減策は新規参入の環境を整える狙いもある。

 予算削減に応じるかを含めた来季のエントリー締め切りは29日。ただ、莫大(ばくだい)な金が動くF1でFIAとチームの駆け引きは日常茶飯事である。F1が始まった1950年から参戦している名門フェラーリが撤退する可能性は低いとの見方が一般的で、FIAのエクレストン副会長は「フェラーリもばかじゃない。F1から撤退したいと思っていない」と強調した。

 トヨタ関係者は「本社で(撤退を)検討していない。FIAのやり方に強い懸念を示したということだろう」と冷静に話している。(共同)