日本の乾友紀子(24=井村シンクロク)三井梨紗子(21=東京シンクロク)組が92・0079点で、ロシア、中国に続く銅メダルを獲得した。

 今だけは泣いていい。日本としては8年ぶりのメダル獲得。乾と三井の目からは感激の涙がこぼれる。練習時の涙は厳禁。「泣いたら疲れるだけ。親の死んだとき以外は涙なし」と厳しい井村ヘッドコーチ(HC)も、選手たちを優しく抱いた。

 予選はメダル圏内の3位通過も4位ウクライナとは0・0908点差。1つのミスも許されない。演技順は、そのウクライナの次。井村HCは演技前の乾と三井に言った。「正面からいって、比べてもらえばいい」。厳しい練習に耐えてきた2人は、できる限りの演技をみせた。

 昨年4月、10年ぶりに日本代表コーチに復帰した井村HCは驚いた。長い低迷が選手たちからストイックさを奪い取っていた。「目立つのが嫌いで、みんなと一緒にいるのが大好き。ゆるキャラの極め付き。今の若者そのもの」。真のアスリートに変えるために選んだのは「窮地に追い込むこと」だった。

 朝7時半から、ときには日付が変わるまでの練習が続く。休みはほぼなし。3月には12人中2人が離脱。中には「死にたい」と漏らす選手もいた。それでも、今大会の10人のメンバーは耐えた。

 世界選手権に近づくにつれ、優しかった選手たちは闘争心を前面に出すようになった。3位通過の予選後、乾は「最後まで粘る」と執念を見せれば、三井は「最後の最後まで勝負して、勝ちにこだわる」と貪欲に言った。井村HCは「選手になった。ちょっとだけ」と鬼コーチの最高の褒め言葉。たくましく戦うアスリートになった2人が8年ぶりのメダルを勝ち取った。