ラグビーW杯イングランド大会が18日に開幕する。歴代日本代表において「史上最強」といわれるエディージャパンは、91年以来24年ぶりの勝利に終わらず、8強進出を目指す。躍進のカギを握る日本の武器を、5回に分けて紹介する。第1回は、フランカーのリーチ・マイケル主将(26)の精神力。ラグビー王国の母国ニュージーランド(NZ)の闘争心と、日本で学んだ献身的な心を兼備し、チームを歴史的な快挙へと引っ張る。

 ボールを持って相手に突っ込む、タックルに入る。NZ仕込みの闘争心がリーチを突き動かす。昨季は世界最高峰リーグ「スーパーラグビー(SR)」のチーフスでスタメンを守り続けた。「相手を殺すくらいの気持ちでプレーしないといけない」。試合が始まれば、グラウンドで起きているのは「ケンカ」だと表現する。「圧力をかけて相手ゴール前まで迫って、息の根を止める」。温厚なリーチだからこそ、あえて選ぶ鋭い言葉に覚悟がにじむ。

 14年春、エディー・ジョーンズ・ヘッドコーチから主将を任された時に言われた。「お前はもう日本に暮らして10年近くなる。優しくなりすぎている」。その言葉が胸に突き刺さった。SRでチームメートのNZ代表サム・ケインを見て奮い立った。「超強気で、誰でもぼこぼこにするような選手だった」。俺もやってやる-。眠っていた闘争心に火がついた。「今は、グラウンドに立ったら自分が1番だと思っている」。

 一方で「日本で培ったことが役に立っている」とも言う。15歳で留学生として来日し、北海道・札幌山の手高に入学。学んだのは、こつこつと努力を重ねる実直さだ。部活動に加え、真冬も練習後に1人雪道を歩いて毎日ジムに通った。チーフスでも毎朝5時に起きて、ジムに一番乗り。ひたむきさはSRの仲間にも驚かれた。「日本ラグビーに育てられた。だから今がある」。誰よりも走り、タックルする。チームのために骨身を削る献身的なプレーで、仲間を鼓舞し続ける。

 初戦の南アフリカはフィジカルでは世界一といわれる。SRで南アのチームと対戦したがリーチは「思っていたほどじゃなかった」と力強い。優勝候補が相手でも、チームの勝利を信じ、本気で倒しにかかる。日本の先頭には、強い精神力を持った頼もしい主将がいる。【岡崎悠利】

 ◆リーチ・マイケル 1988年10月7日、ニュージーランド生まれ。5歳でラグビーを始める。札幌山の手高-東海大をへて、トップリーグの東芝に所属。来日10年目の13年に日本国籍を取得。家族はニュージーランド人の父とフィジー人の母、妻知美さん、長女真依ちゃん。フランカー、NO8。代表キャップ数は43。189センチ、105キロ。