バドミントン男子シングルスでリオデジャネイロ五輪のメダルを期待された桃田賢斗(21=NTT東日本)が、12年ロンドン五輪代表の田児賢一とともに東京・錦糸町の違法カジノ店で賭博をしていたことが発覚した。7日早朝、遠征先のマレーシアから緊急帰国し、所属するNTT東日本の聞き取り調査で事実を認めた。これを受けて日本バドミントン協会の銭谷欽治専務理事は、桃田を五輪代表に「推薦できない」と明言。五輪出場は絶望的となった。両選手は今日8日に都内で会見を行う。

 この日発表の世界ランクで2位に浮上した「五輪の星」桃田に、賭博という衝撃的なスキャンダルが発覚した。スーパーシリーズプレミア・マレーシアオープンという大きな大会で6日の1回戦を突破したが、続く2回戦は棄権。急きょ帰国の途に就いた。理由は14年12月から数回、錦糸町のカジノ店に出入りし、賭博をしていた疑いが明らかになり、東京の本社で聞き取り調査に応じるためだった。

 午前8時、マレーシアから成田空港に帰国した桃田はマスクをし、無言でタクシーに。午前9時ごろから始まった調査では、あらためて賭博の事実を認めた。関係者によると、疲れて憔悴(しょうすい)しきった様子だったという。7日の段階では訪れた回数、使った費用など詳細は分かっておらず、情報を整理した上で今日8日の会見で、本人の口から直接説明される。

 このカジノ店は昨年、警視庁の捜査を受け、賭博開帳図利容疑などで経営者や指定暴力団住吉会系組幹部ら店側の6人が逮捕され、閉店した。桃田は日本代表として、海外遠征する費用の一部を日本スポーツ振興センター(JSC)から受け取っている。国の公的資金を使いながら、反社会的勢力と関係がある賭博に手を染めていた社会的責任は重い。

 この日のNTT東日本の調査を受け、バドミントン協会の銭谷専務理事は、日本オリンピック委員会(JOC)にリオ五輪代表として「推薦できない」との見解を示した。日本男子初のメダルが期待されていたリオ五輪出場は絶望的となった。さらにバドミントンのみならず、スポーツ界全体に与える影響も計り知れない。銭谷専務理事は「非常に残念。真摯(しんし)に受け止めて再発防止に努めたい。心より謝罪申し上げたい」と、涙を流しながら頭を下げた。

 処分は10日の緊急理事会で協議される。日本代表指定を外れるだけでなく、一定期間の大会出場禁止など厳しい処分になる見込みだ。銭谷専務理事は「ポテンシャルの高い選手だけに守りたい気持ちもある。20年の東京五輪には出てほしい」と話したが、戦線を離れてから再びランキングを上げ、五輪切符をつかむのは容易ではない。桃田には、厳しい道が待っている。【高場泉穂】

 ◆桃田賢斗(ももた・けんと)1994年(平6)9月1日生まれ。香川県出身。福島・富岡高-NTT東日本。12年の世界ジュニア選手権優勝。15年世界選手権3位で、男子シングルス日本勢で史上初のメダル。上位選手によるスーパーシリーズ・ファイナルも制した。175センチ、70キロ。

 ◆バドミントンの五輪代表決定方法 各国・地域に与えられる8月のリオデジャネイロ五輪出場枠は、昨年5月から1年間の国際大会で稼いだポイントによるランキングで振り分けられる。男子シングルスの最大枠は「2」で、日本協会は枠を獲得した選手を五輪に出場させる方針。桃田選手は3月の全英オープンでベスト8に入り、五輪出場を確実にしていた。