南米初開催となるリオデジャネイロ五輪(8月5日開幕)まで95日となった。日刊スポーツでは三須一紀記者(35)を現地派遣し、開催を控えたリオの街をリポートする。連載1回目は「会場・インフラ整備状況」。リオ五輪大会組織委員会は「会場は98%できた」と主張するが、五輪パーク内外は重機が点在し工事現場さながらだ。BRT(バス高速輸送システム)などの新交通網もぶっつけ本番の様相。五輪関連施設で死亡事故が起きるなど、開幕直前まで課題は尽きない。

 砂ぼこりが舞うバーラ地区の五輪パーク。ダンプカーが土砂を運び、ミキサー車がセメントを作り、作業員が1輪車でせっせと運んでいる。五輪パーク前の幹線道路に架ける歩道橋は今も骨組み状態。それでも、カメラを向けると休憩中の作業員たちは余裕の笑み。3カ月後、世界の注目を一身に浴びる場所は、依然「工事現場」だった。

 組織委の会場管理課長、グスタブ・ナシメント氏(36)は競技会場について「98%できている。5月中に完成する」と話す。だが、自転車トラック競技を行う「ベロドローム」は配管がむき出しで外壁もできていない。リオ市が作業スピードの遅かった建設業者を変更したためだが、こちらも「6月末にはできる」と強調した。

 リオの特徴は、五輪パークの75%の敷地が五輪後、建設会社に譲渡される点だ。ナシメント氏によると、リオ市と建設会社の交渉で、譲渡を条件に建設会社がある程度の整備費用を自己負担しているという。ベロドロームに関してはそれが裏目に出た形だ。

 2020年東京五輪と同様に、リオの売りも大会後の「レガシー(後利用)」と説明する。ハンドボール会場は分解されて4つの学校として再利用される。競泳会場もプールや屋根を分解し、ブラジル各地で再利用。パーク内のその他の会場はそのまま残り「南米最大のトレーニングセンター」に。フェンシングやテコンドー会場「カリオカアリーナ3」は改築され、トップ選手育成のための学校に生まれ変わるという。

 「順調」を強調するが、市民の反応は冷ややかだ。4月17日、下院で可決したルセフ大統領の弾劾決議の際、親子でデモに参加した36歳女性は「政治家が税金を泥棒ばかりして、物価が高騰している。五輪どころではない」と言えば、11歳の娘は「五輪にお金を使う前に私たちの教育に使って」と訴えた。市内には五輪ポスターなどもほとんど貼られていない。

 そんな中、五輪に伴い13億円以上をかけて1月に完成したばかりの自転車専用橋が、同21日に崩落。2人が死亡し、数人が行方不明となった。開閉会式が行われるマラカナンスタジアム前の道路では水道管が破裂した。政治不安、経済状況の悪化がまん延するリオは、残り3カ月で「五輪熱気」を取り戻すことはできるのだろうか。【三須一紀】