世界6位の錦織圭(26=日清食品)が、薄氷の勝利で初戦を突破した。同31位のファビオ・フォニーニ(イタリア)に、最終セットは3-5と追い込まれながら、4-5の相手サーブでミスにも助けられ6-2、3-6、7-5のフルセットで退けた。3回戦は過去6戦全敗のガスケ(フランス)と対戦する。

 錦織が土俵際まで追い詰められた。流れは完全に相手にあった。負けてもおかしくない試合を何とか勝ちにつなげた。崖っぷちから生き残った。4月の米マイアミ大会から2大会連続の決勝進出と好結果を残してきたが、今回ばかりはコート上で手を挙げる姿に余裕はなかった。

 攻守の見極めを間違えると、命取りになるという典型だった。第1セットは攻めと守りがかみ合い、世界31位を圧倒した。第2セットから歯車が狂った。安定を重視し、ミス待ちになったところで、相手を調子づかせた。

 フォニーニは過去、ツアー10度の決勝のうち、9度が赤土。大のクレー好きでナダルにも勝った経験がある。1度、息を吹き返させたら、手が付けられない。最終セットは完全に防戦一方。しかし、4-5で勝ちを意識した相手からブレークし、追いついた。

 運も味方した。6-5リードで相手サーブ。0-30から凡ミスを犯し、球を観客席に打ち込んでこの日、2度目の警告となり、錦織にポイントが転がり込んだ。一気に0-40とマッチポイントが訪れ、そのまま押し切った。「第3セットも競ったが勝ててうれしい」と話す錦織の安堵(あんど)の表情が、苦しい戦いを物語っていた。【吉松忠弘】