スポーツクライミングの天才少女が、20年東京五輪に名乗りを上げた。昨年のリードジャパンカップで史上最年少優勝を果たした森秋彩(あい、13=茨城県連盟)が、予選5課題すべてをクリア。昨年世界選手権2位の野中生萌(19)同3位の野口啓代(27)を抑えて、トップで今日29日の準決勝に進んだ。伸び盛りの中学1年生は、目標に国際大会出場資格(16歳以上)に達する3年後の東京五輪での優勝を掲げた。

 小さな体を思い切り伸ばして、森が最終5課題目のトップホールド(突起物)を両手でつかんだ。5完登を達成し「びっくりしました。全部できると思っていなかった」。世界トップレベルの実力を持つ野中を内容で上回り、多くの報道陣に驚きながらも「4課題目までは1撃(1トライで完登)だったのに、最後の課題で落ちて悔しい」と、アスリートの目で言った。

 競技を初めて6年、出会いは父正夫さん(50)に連れられて行ったショッピングモール内のジムだった。もともと体を動かすのは好きで、幼稚園の時はフットサルをやっていたが「登った時の達成感が気持ちよかった」。クライミングのとりこになり、1年後にはイタリアでの国際大会にも出場した。

 つくば市立代木中入学後も競技を続けた。毎日近くのジムで3時間のトレーニング。「練習は楽しいから好きです」と話す。3年前からは月に1回、専門コーチの指導も受ける。昨年6月にはリードのジャパンカップで初優勝。トップ選手がW杯で不在だったとはいえ、日本一にも輝いた。

 国際スポーツクライミング連盟(IFSC)の出場規定は16歳以上。日本代表選考を兼ねる今大会で上位に入っても、W杯などの出場権はない。規定をクリアするのは東京五輪の20年になる。それでも、日本山岳協会の小日向徹強化委員長(49)は「リードも強いし、このまま伸びれば可能性はある」と、若い力に期待する。

 ボルダリングの予選は課題の難度も抑えめで、最終成績には直結しない。本人も「目標は決勝進出。準決勝を頑張りたい」と控えめに話した。それでも、練習でも落ちるたびに時間を忘れて何度も壁に挑む負けん気は本物。「出場して、優勝してみたい」と3年後の夢舞台、東京五輪を目指す。【荻島弘一】

 ◆森秋彩(もり・あい)2003年(平15)9月17日、横浜市生まれ。6歳の時につくば市でクライミングを始め、15、16年ジュニアオリンピック杯で連覇。16年は全日本ユース選手権のリード、ボルダリング2冠に輝き、リードのジャパンカップでシニア初タイトルを獲得した。152センチ、41キロ。