世界2位のサラリーマンクライマーが、大会に歴史をつくった。連覇を狙った藤井快(こころ、24=東京都連盟)が最終4課題目で大逆転の一発完登。大会男子初の連覇を果たし、W杯総合優勝を狙う新シーズンに弾みをつけた。トップにはプロ選手も多いが、来月に挙式を控えて会社員のまま20年東京五輪を目指すことを宣言した。女子は伊藤ふたば(14)が、11回目の優勝を狙った野口啓代(27)に競り勝って史上最年少優勝を果たした。

 藤井がほえた。ゴールのホールド(突起物)を手にすると、声にならない声を上げた。1撃(1トライで完登)すれば優勝が決まる最終課題。「意地と気合と根性で」(藤井)ただ1人登り切った。普段は冷静だが「今日は、出ちゃいましたね」と、照れながらガッツポーズを振り返った。

 勝ちたい理由があった。来月に会社の同僚と挙式する予定。「守るべきものができたので」と照れた。仕事の都合で会場で応援してもらうことはできなかったが「喜んでくれると思います」。新しい家族の存在が、最後の最後で体を持ち上げる力になった。