<レスリング:全日本選手権>◇第1日◇21日◇東京・代々木第2体育館

 女子60キロ級で初優勝した栄希和(20=至学館大)は「すなおにうれしい。父に恥じない試合ができた」と喜んだ。

 父は至学館大監督で日本の強化のトップ、88年ソウル五輪代表で87年世界選手権では銅メダルも獲得した和人氏(54)だ。さらに、母は92年世界選手権女王で圧倒的な強さを誇った坂本涼子さん(44)。父和人氏は「親心としては、うれしい。本当に私の娘なんだろうかと思うほど成長した」と目を細めた。

 指導者をしていた両親の影響もあって、小さい頃からマットが遊び場だった。しかし、本格的に競技を始めたのは愛知・大府北中2年から。わずかキャリア3カ月で全国中学大会3位になり、注目された。もっとも、至学館高、至学館大では目立った成績は残せなかった。それでも、今季は世界ジュニアで3位に入るなど急成長。「優勝して父には『強くなったな』と言われた。母にも喜んでもらった」と笑顔で話した。

 父のパワーに母のテクニック、その資質とともに環境も抜群だった。五輪3連覇中の吉田沙保里(32=ALSOK)を筆頭に多くの強豪が練習する至学館大。中でも48キロ級世界王者の登坂絵莉(21)は同級生で仲もいい。「絵莉を尊敬しているし、ついていけば結果も残せると思っています」と話す。

 60キロ級は非五輪階級だが「まずは世界選手権に出ること」と同級での日本代表入りを狙う。「その次は五輪も」という愛娘の横で、父和人氏は「メダルをとってほしい」と、自身が果たせなかった五輪のメダル獲得を願っていた。