<ショートトラック:全日本距離別選手権>◇初日◇5日◇山梨県小瀬スポーツ公園アイスアリーナ

 バンクーバー五輪代表第1次選考会を兼ねた全日本距離別が開幕、男子500メートルは、飲食チェーン店「とらふぐ亭」所属の吉沢純平(24)が制した。ふぐを配送しながら練習し、今季はナショナルチームから漏れるなどの苦労を経験したが、シニアの大会で初優勝。今大会と全日本選手権(12月、長野)の成績で決まる五輪代表の座が、大きく近づいた。女子では桜井美馬(20=早大)が500、1500メートルの2冠を達成した。

 伏兵の吉沢が金星を挙げた。4人で争った男子500メートル決勝。吉沢以外は寺尾、藤本、坂下と、日本代表のエース級がズラリ。その中で今季は日本スケート連盟の強化選手から漏れていた吉沢が、大逆転で優勝した。残り半周で先頭を争っていた坂下と藤本のすきをつき、インから差し切った。喜びすぎて転倒し、腹ばいになったが笑いが止まらない。「大学3年時に逃した五輪を目指してきてよかった」と声を弾ませた。

 所属は「とらふぐ亭スケート部」。部員は1人だ。1歳上の兄一哉さんが、とらふぐ亭の埼玉・所沢店で店長を務める縁で活動費を支援してもらっている。調理師免許はなく、所属1年目の一昨年は、午前9時から午後5時まで、ふぐを配達しながら夜間練習。大学1年時にこの種目で2位に入り、将来を期待されながら伸び悩んだ逸材が復活。「社会人になる時、数十社に支援を断られたので感謝しています」と夢の五輪切符に近づき、また笑った。