07年知事選で、16年五輪の東京招致を公約に3選されて以来、突っ走ってきた石原慎太郎知事(77)にとって、今回の失敗は大打撃になりそうだ。石原氏自身、かつて招致失敗→辞職の可能性に言及していた。「就任以来、こんなに仕事をしたのは初めて」と都幹部が驚くほどの情熱を傾けただけに、残り1年半の任期を待たず“電撃辞任”の可能性も指摘される。足もとの都議会は、第1党民主党との対立が激化。石原都政、最大のピンチだ。

 石原氏は、コペンハーゲンの会場の別室で投票を見守った。関係者によると、落選が決まると、しばらく押し黙り、落胆がありありと分かる表情で「ありがとう」と周りに声を掛けていたという。「人事を尽くして天命を待つ」と待ち続けた結果は、落選。「最後のご奉公」と位置づけた3期目の重要公約を、果たすことはできなかった。

 新銀行東京の再建問題や築地市場の豊洲移転問題…。多くの難題を抱える3期目。石原氏は五輪招致に希望を見いだそうとした。求心力回復に、なくてはならないカードだった。プレゼンターや案内役で自ら汗をかき、「(99年の)就任以来、知事がこんなに仕事をしたのは初めて」と幹部が驚いたほど。反転攻勢のきっかけをつかもうと、なりふり構わず情熱を傾けた。

 しかし、世論は最後まで盛り上がらず、象徴的な「招致の顔」も見いだせないなど、誤算が続いた。「五輪招致は都政で唯一といえる明るい話題。失敗した今、知事のやる気、気力を維持できる政策を準備しないと残る1年半、求心力はさらに落ちる」と、都の局長級幹部は懸念する。

 都議会は、石原都政を支えた自民、公明両党が6月の都議選で過半数割れし、第1党の民主党は対決モード。IOC総会までは“休戦”状態だったが、今後は波乱含みだ。都幹部は「招致活動費は公表している150億円どころじゃない」としており、招致活動の実態が露呈すれば、石原氏の責任問題が浮上する。

 そのため、夢破れた石原氏が電撃辞任するのでは、との見方も強い。石原氏自身、3期目の出馬会見で「総会で招致が否決されたら」の問いに「責任を取らないといかんでしょう」と答えていた。猪瀬直樹副知事や自民党の舛添要一参院議員らが、「ポスト石原」として浮上している。

 「こんなに尽くしたんだから、これで東京で(五輪を)やらなかったらつれえよ」。先月23日のイベント出席時、石原氏は招致大使のタレント萩本欽一にこう漏らしていた。4日、石原氏は都内で会見に臨む。