<体操:世界選手権>◇3日目◇15日(日本時間16日)◇ロンドン・02(オーツー)アリーナ◇男子個人総合決勝

 北京五輪個人総合銀メダルの内村航平(20=日体大)が、日本体操界の最年少世界王者となった。6種目のうち4種目で最高得点をマークし、合計91・500点。2位のキーティングス(英国)に2・575点の大差をつけ、初出場で優勝の快挙をなし遂げた。五輪、世界選手権を通じ日本勢7人目となる男子個人総合の世界王者。これまでの最年少だったメキシコ五輪の加藤沢男(当時22歳0カ月)を抜いた。田中和仁(徳洲会)は3位と0・100点差の4位だった。

 北京五輪銀メダルから1年。内村が世界の頂点に立った。最後の鉄棒を迎え、落下しても金メダル間違いなしというほどの圧勝。「実感はまだないけど、鳥肌が立った。世界で1番うまいということはうれしい」。日本体操史上最年少で世界王者となった日本の若きエースは誇らしげだった。

 初日(13日)の予選、そして決勝と、ただ1人だけ合計90点台をたたき出した。床運動、つり輪、跳馬、鉄棒の4種目で最高得点をマーク。平行棒は倒立にいく際にバーを握り直すミスを犯し、同種目6位に終わったが、武器である難易度の高い技を連発し、体の線を美しく見せる演技を両立し、完全に抜きんでた。

 北京五輪で2度の落下を経験した2種目目のあん馬で、14・900点を出し波に乗った。ほぼ完ぺきな演技で関門を乗り越えた。週6日、徹底的に鍛えた「練習の成果が出た」と思わずガッツポーズ。そこから首位を譲ることなく金メダルにひた走った。

 北京五輪では21人抜きで、最終的に銀メダルを獲得した。しかし「実力で取ったメダルじゃない」と感じていた。もともとは、その日の調子だけで演技するような天才型だ。それが銀メダルで、もっとできるとハードな練習に目覚めた。この日も、最後の鉄棒で着地が乱れると「完ぺきな演技じゃなかった」と悔しそうな表情さえ見せた。

 そして、内村の見すえる先には、12年のロンドン五輪金メダルがある。「今日の演技では、五輪で金を取れない」。ほぼ完ぺきな演技で終えた得意の床運動では、技の難しさを現す価値点を上げる予定で、そうすれば今大会の得点を合計2・5点上回る「94点は出せる」と豪語。今大会は、北京五輪団体を制した中国が出場を見合わせただけに、金メダルにも油断はしていない。

 数々の栄光を手にしてきた「体操ニッポン」も、五輪と世界選手権の個人総合2冠を達成した選手はいない。ロンドン五輪まで3年。「北京が銀なので、ロンドンでは金を取りたい。手応えをつかんだ」。ロンドンの五輪の会場で「内村時代」が堂々と幕を開けた。