東京都の石原慎太郎知事(77)が9日、2020年夏季五輪に「わたしの代での責任で東京はアプライ(申請)する」と招致に名乗りを上げる意向を明らかにした。10月に2016年の招致に失敗したばかりで、150億円とされる招致費用の詳細も明らかになっていない。この段階での再挑戦表明に、都議会では野党第1党の民主党などの野党はもちろん、与党自民党からも疑問の声が噴出している。

 石原知事が都庁で五輪再挑戦をぶち上げた。20年五輪には広島、長崎両市がすでに招致を検討しているが「東京に決まったら広島と共催する」とも話した。五輪憲章では複数都市の共催を認めていないが、どこ吹く風といった表情だった。

 東京は10月に16年五輪招致に失敗したばかり。その失敗のツケでもある150億円の招致費用の詳細は「明らかにする」としているが、現段階ではまだ明らかになっておらず、招致運動の総括はされていない。

 都議会の野党・民主党、共産党だけでなく、与党の自民党や公明党からも疑問の声が上がった。ある与党議員は「都民の支持がないことが原因で招致に失敗したばかりじゃないか。こんなに唐突に再挑戦を言い出して、うまくいくと思っているんだろうか」とあきれ顔だった。

 石原知事は、現在3期目で11年4月の任期満了後の退任を表明している。五輪招致に向けたスケジュールは (1) 来春までに日本オリンピック委員会(JOC)に立候補を表明 (2) 来夏国内候補一本化 (3) 11年夏に国際オリンピック委員会(IOC)へ立候補申請 (4) 13年夏のIOC総会で開催地決定-という流れ。

 11年4月に退任すれば、招致活動に途中までしか立ち会えないことを指摘されると「来年の4、5月ごろがJOCとしてはタイムリミット。手続きを踏んでおかないと、20年の可能性はまったくなくなる。名乗りを上げるのは私の責任」と述べた。その上であらためて「(3期目の)次はやりません。次の知事が(立候補を)最終的に決めるんでしょうけど」と、次の知事に判断をゆだねる姿勢をみせており、都の幹部も「野党はへそを曲げる。次の知事選の争点になりかねない」と気をもんでいる。