<競泳:東京スイミングセンター招待公認記録会>◇初日◇20日◇東京スイミングセンター

 北島が強いままで帰ってきた!

 昨年の北京五輪で2大会連続平泳ぎ2冠を達成した北島康介(27=日本コカ・コーラ)が、同五輪以来1年3カ月ぶりの長水路(50メートルプール)レースで100メートル平泳ぎに出場。2位に0秒88の大差をつける1分1秒91で優勝した。同五輪で自身がマークした当時の世界記録58秒91には及ばなかったが、07年のこの大会で出した1分1秒65に肉薄。ブランクの影響はまったく感じさせなかった。レース後は12年ロンドン五輪出場に前向きな姿勢を示した。

 北島は理想の泳ぎを忘れていなかった。ストローク数は当時の世界新記録で制した、北京五輪100メートル平泳ぎ決勝と同じ前半16回、後半20回。大きくて伸びのある泳ぎは健在だった。終始トップを譲らず、最後は失速する周囲を突き放した。1分1秒91は泳ぎ込み主体のこの時期では好タイムといえる。同五輪シーズン初戦となった2年前のこの大会より0秒26遅いだけ。「ホッとした。レース前は不安で恐かった。でも北京の記憶を自分の中で覚えていてくれてうれしかった」と笑顔で話した。

 高速水着はあえて着用せず、ミズノ社製のハーフスパッツ型の水着を着用した。北島がマークした100、200メートルの世界記録は、昨年2種目とも塗り替えられたが、その要因となった高速水着は来年以降は着用禁止される。目先の勝ち負けやタイムにこだわらず、あくまで目標とする同4月の日本選手権を見据えて、北京五輪後初となった国内復帰レースに備えた。

 北京五輪後は競泳を始めて以来初めて長期休養を取った。10年以上指導を受けてきた日本代表平井ヘッドコーチの元を離れて、今年6月に米ロサンゼルスの南カリフォルニア大で再始動。約10カ月に及ぶブランクは、4泳法の中でも特にバランス感覚が重視される平泳ぎでは異例だが、平井ヘッドコーチは「(日本代表の)立石くんや(北京五輪銀メダルの)ダーレオーエンも指導したが滑らかさが違う。あと大きな違いはモチベーション」と話した。

 これまで北島はロンドン五輪についてコメントを封印していたが「1分1秒9じゃまだ見えない。でもいろんな試合に出て、いろいろ吸収していきたい。それがロンドンにつながる」と明言。平井ヘッドコーチも「五輪3連覇を目指せれば最高」。現在は長期ブランクで強化指定選手から外れているが、来年3月に米コロラド州で行われる日本代表合宿にも特例で参加予定。北島がいよいよ競泳の第一線に戻ってきた。【高田文太】