<卓球:全日本選手権>◇3日目◇14日◇東京体育館

 88年ソウル五輪代表の斎藤清(47=埼玉工大職員)が、男女シングルスを通じて大会史上最多となる通算101勝目を挙げた。男子シングルス1回戦で、谷本周星(17=明徳義塾高)に3-0のストレート勝ち。昨年の大会で、伊藤和子さんが02年に記録した女子シングルス通算100勝と並んでいたが、この勝利で史上最多となった。2回戦では松渕健一(20=明大)に2-3で惜敗。試合後には、全日本選手権の出場は今回を最後にする意向を明かした。

 30歳下の高校2年生、谷本をダイナミックなスイングで左右に揺さぶり、圧巻の8連続得点で幕を開けた第3ゲーム。こん身のスマッシュで相手ボールがネットにかかった瞬間、斎藤は両拳を突き上げた。大記録を打ち立てたベテランを、埼玉から駆けつけた応援団はスタンディングオベーションで迎えた。

 昨年、通算100勝を決めたときから「1年間、この1勝だけを考えてきた」。祝賀会続きで84キロまで増えた体重を、大好きなビール断ちで76キロまで絞り、軽やかなジャンプを何度も見せた。プレッシャーも「記録を成し遂げられるのが斎藤清だと思ってもらえている」と前向きにとらえた。

 20年間同じラケットを使い、世界で勝てるからと少数派のペンホルダーを貫いた。かつて一緒に混合ダブルスで2連覇した、妻よし子さんの七回忌を昨年12月に終え「101勝と時期が重なったのは運命。やっと終止符が打てると妻に言えます」としみじみと話した。

 28歳で第一線を退きながら競技を続け、6年前からは新記録を後押しする埼玉県卓球協会の推薦で出場して達成した新記録。「全日本は生きがい。でもこれが最後になると思う」と、全日本選手権からの撤退を宣言した。今後は卓球の普及に努めるという斎藤の表情は、充足感に満ちていた。【鎌田良美】