<テニス:全豪オープン>◇3日目◇19日◇オーストラリア、メルボルン・ナショナルテニスセンター◇男子シングルス2回戦

 【メルボルン=吉松忠弘】世界82位の錦織圭(21=ソニー)が、全豪の日本男子として1965年石黒修以来46年ぶりの3回戦進出を果たした。04年ウィンブルドンでベスト8に入ったこともある同36位のフロリアン・マイヤー(27=ドイツ)に6-4、6-3、0-6、6-3の2時間25分で勝ち、全豪で2勝以上を挙げた日本男子としては史上4人目となった。

 喜びが、体中からほとばしった。感情をため込んだ錦織が、勝利の瞬間、ほえた。「カモーン!」。上半身を反らし、両手のガッツポーズには、全身の力がみなぎった。「理想のテニスで勝てたことで、本当にうれしかった」。日本男子テニス界で、46年ぶりに歴史の扉が動いた。

 攻守ががっちりとかみ合い、191センチと長身のマイヤーが繰り出すショットを受け止めた。マイヤーは、初戦で元世界3位のダビデンコを破り波に乗る難敵だ。しかし、錦織は「1回戦を勝って余裕もあった。いいところで攻撃もできた」と自信あふれるプレーで、格上を撃破だ。

 世界の頂点を狙うニュー錦織の誕生だ。今年に入って、大きくテニスを変えた。昨年12月、新しいギルバート・コーチらスタッフと家族と話し合った。自ら「トップ20に入りたい」と決意を語った。そのために、アガシらを育てたギルバート・コーチの自宅で数日間過ごし、帝王学も伝授された。

 昨年までのテニスを「トップ50までのテニス」とギルバート・コーチに指摘されスタイルを変えた。ミスを減らし、堅実なストロークを軸に、チャンスの時だけ、得意のフォアをたたく。これが、昨年末から錦織が取り組んできた理想のテニスだ。そのためには、ジャンピングショットの「エア・ケイ」も封印した。1回戦は0本。この日も、わずか1本だけ。しかし、その新たなスタイルで、しっかりと勝利を呼び込んだ。第3セットを落としてからも立て直し「その状態でも勝てたことがうれしい」と、メンタル面でも成長を見せた。

 錦織の才能に、海外メディアも再び注目を始めた。会見で、英国の記者は「フェデラー、ナダルに次ぐ才能を持つ世代」として、錦織を高く評価。「期待に応えられるか」と質問し、錦織が「2人は僕とは別次元にいる」と謙遜する場面も見られた。

 次戦は、世界9位のベルダスコが相手だ。「ここまで来たらプレッシャーはない。楽しみたい」。もし勝てば、全豪3勝は、32人が本戦に出場した32年に、佐藤次郎が3回勝ってベスト4に入った時に並ぶ最多勝タイとなる。「エア・ケイ」を封印したニュー錦織が、再び新たな歴史の扉をこじ開ける。