<テニス:全豪オープン>◇5日目◇21日◇オーストラリア、メルボルン・ナショナルテニスセンター

 世界82位の錦織圭(21=ソニー)の快進撃が止まった。男子シングルス3回戦で同9位フェルナンド・ベルダスコ(27=スペイン)に、2-6、4-6、3-6のストレートで敗れ、1932年(昭7)の佐藤次郎以来日本男子79年ぶりの全豪3勝はならなかった。08年全米以来のベスト16進出は逃したが、世界ランクは70位前後に上昇する見込みで、松岡修造の日本男子最高の46位を射程内にとらえた。

 世界9位の壁が大きく立ちはだかった。錦織は反撃の糸口を最後までつかめず、ベルダスコの豪打とくせ球の前に沈んだ。「トップ10のテニスを感じた。結構力の差を感じた。ショックは大きい。まだまだ足りない部分があると痛感した」。新たなスタイルで1、2回戦を勝ち上がった自信も吹き飛んだ。

 試合前に腹痛が起きた。いつもの緊張する時のサインだった。世界でも有数のフットワークを誇る錦織の足が固まって動かない。「雰囲気にのまれた。滑り出しが悪かったのは、全部、自分のせい」。第1セットは、わずか30分で2ゲームしか奪えず。振り回されすぎて、臀部(でんぶ)を痛め、簡単な治療も受けた。

 この日だけは、新しいプレースタイルでもあるミスを減らした守り重視のスタイルだけでは勝てないと分かっていた。「攻撃的に行こうと決めていた。でもミスが多くなってしまった」。第2セット以降、ようやく足も動き、ラケットも振り切れた。しかし、ベルダスコの重いスピンを返すだけで精いっぱいだった。

 世界へ飛躍するための我慢の時だ。これまでの自由奔放な攻めのプレーと、新しい守りのプレーがかみ合うまでには時間がかかる。「守りに重点を置きながらも、攻めていかないと勝てない。その判断力をつけたい」。選択の幅が広がればプレーの幅も広がる。その半面、攻守の選択を誤れば、この日のように歯車はかみ合わない。

 今年はまだスタートしたばかりだ。開幕戦のインドでベスト8。今大会も3回戦と勝ち星を着実に重ね、31日に発表される最新世界ランクは70位前後に上昇する見込みだ。敗戦の中にも「いくつか通じたショットはあった」と、部分的には、手応えも感じている。今月末にユニクロとの契約会見のためにいったん帰国する。

 今年の目標の1つは、松岡修造がつくった日本男子最高の世界46位を突破することだ。そのためにも新たなプレースタイルをできるだけ早く確立したい。「まだまだやることがたくさんある」。右ひじのけがで棒に振った1年半。錦織の世界への道は、まだ始まったばかりだ。【吉松忠弘】