<テニス:ウィンブルドン選手権>◇最終日◇3日◇ロンドン、オールイングランドクラブ

 世界2位のノバク・ジョコビッチ(24=セルビア)が、初優勝で初の世界1位の栄誉を飾った。3度目の優勝を狙った同1位のラファエル・ナダル(25=スペイン)を6-4、6-1、1-6、6-3で下し、03年から続いたフェデラーとナダルの2人の優勝に終止符を打った。優勝賞金は110万ポンド(約1億4300万円)。ジョコビッチは、大会後に発表される最新世界ランクで、73年に現在のシステムが導入されて以来、25人目の世界1位となる。

 ジョコビッチが、両手を突き上げた。最後はナダルのバックがアウト。そのままテニスの聖地にあおむけに倒れると、喜びで顔を覆った。「とても言葉では表せない。夢のようだ」。ネット際で、喜びをかみしめるように、聖地の芝を口に含んだ。

 今季開幕から全仏準決勝でフェデラーに敗れるまで41連勝。まだこの1敗しかしていない。対ナダルも、これで今季は5戦無敗で「今なら勝てる」と、大きな自信を持って挑み、ナダルの反撃を第3セットだけに封じ込めた。

 飛躍の原因は体質改善にある。昨年まで後半にたびたび失速した原因が、小麦に含まれるタンパク質グルテンのアレルギーによる呼吸困難だったことが発覚。症状を抑えるためにパスタやパンを断つと、体重が減って切れが増した。

 ナダルの野性味、フェデラーの気高さに比べ、風貌はあか抜けない。しかしテニス界一の人気者。シャラポワやナダルの形態模写はそっくりで、過去、大会期間中に何度も披露した姿が、動画サイトで配信された。3月の東日本大震災の際には、靴下に「JAPAN」という文字を刻んでプレーした心優しい青年だ。

 90年代に母国を包んだ戦火の中でも「ウィンブルドンの決勝に立ちたい」という夢を抱き続けた。「初めて見たテニスがウィンブルドンだった」。待ち望んだ初めての舞台は、歓喜の瞬間で幕を閉じた。