<テニス:全仏オープン>3日目◇29日◇パリ・ローランギャロス

 クルム伊達、五輪がピンチだ!

 世界76位のクルム伊達公子(41=エステティックTBC)は、1回戦で同12位で10年覇者のフランチェスカ・スキアボーネ(31)に3-6、1-6の74分でストレート負けを喫した。世界ランクのポイントを上積みすることができず、来週に出場予定のツアー下部大会で優勝しても、世界ランクでの自力のロンドン五輪出場は難しくなった。

 切望していた五輪が遠のいた。得点の最も稼げる4大大会で初戦敗退。苦手の赤土で、初戦から10年覇者と対戦する不運も重なり、クルム伊達は完敗した。「ここで(五輪への)ギャンブルだと思っていた。でも相手がスキアボーネでは」と、その賭けにも敗れた。

 第1セット、3-4までは粘った。しかし、続く第8ゲーム。自分のサーブで40-15とリードしながら落とし、3オールから5ゲームを連取された。流れは一気に相手に行き、そのまま力尽きた。2週前にけがをした左足も「余分だった」と悔やんだ。

 今年の五輪には熱い思いがある。ロンドン五輪会場はテニスの聖地とも言えるウィンブルドン。他の選手だけでなく「私にとっても特別な場所」。特に芝のコートは球のバウンドが低く、クルム伊達の速いリズムに最適だ。昨年のウィンブルドン2回戦では5度の優勝を誇るV・ウィリアムズを敗退寸前まで追い込んだ。

 最新の世界ランクでは、五輪本戦に出場可能な56人目のカットラインは64位。クルム伊達は76位で66人目と圏外だ。来週のツアー下部大会で優勝しても70位前後にしかならず、五輪当確とは言えない。ただ出場権があってもけがなどで欠場する選手もいるため、カットラインが下がり出場できる可能性は残る。

 また、国際テニス連盟(ITF)の推薦が6枠ある。出場国の地域バランスなどが考慮され選ばれる。そのためにも、なるべく世界ランクを上げ、その国のNO・1でいることが重要だ。五輪への道は完全に閉ざされたわけではない。しかし、伊達の最後の五輪への挑戦は、まさに風前のともしびだ。【吉松忠弘】

 ◆テニスの五輪出場権

 男女ともにシングルスは64人が出場。そのうち、56人が全仏直後の6月11日の世界ランキングで選ばれる。1カ国最大4人まで。今週の世界ランキングだと、出場権を持つ選手がすべて出場すると仮定すれば、男子は68位、女子は64位が出場権獲得のライン。残りの8人は、国際テニス連盟(ITF)の推薦が6人、ITF、国際オリンピック委員会、各国のオリンピック委員会の代表が形成する三者委員会の推薦が2人。