<柔道:全日本女子選手権>◇21日◇横浜文化体育館◇体重無差別

 78キロ級の緒方亜香里(22=了徳寺学園)が、78キロ超級以外の選手として14年ぶりに日本一に立った。決勝で田知本愛(24)から大内刈りで有効を奪い、有効勝ちで大会初制覇を遂げた。女子日本代表での暴力問題騒動を受け、新体制で臨んだ初の国内主要大会。昨夏のロンドン五輪での2回戦負けの失意から復活を果たした新女王は、世界選手権、五輪も含めた「3冠」を今後の目標に掲げた。

 「ぎゃ~、ぎゃ~」。緒方の叫び声が体育館に響いていた。表彰式後、仲間にかつがれ、空中に4度のジャンプ。「胴上げは初めてで、めっちゃ怖かった~。いつ落とされるのかと」。

 試合では「怖い」ものはなかった。「今日は以前みたくガツガツ攻めていこうと思った」。小学生時代に空手で全国優勝もした実力者で、攻めが本来の姿。決勝では体重で約30キロ上の田知本にも引かない。奥襟をつかみ、前へ前へ。そして「最近、前、前、後ろがいい」と最後は引いての大内刈り。開始2分40秒、有効を奪って競り勝った。

 「攻め」をなくしたのは失意から。ロンドン五輪では2回戦負け。「ショックで1カ月くらい柔道ができなかった」。気持ちが前を向いたのは最近。社会人になり心機一転。大学時代とは違い、自ら計画して出稽古にも出た。この2週間は高校などで男子とも組み合い、攻撃精神を取り戻した。

 何事にもひたむきに打ち込む性格で、了徳寺学園の歓迎会では苦手なお笑いに挑戦。お笑いタレントのキンタロー。になりきり、AKB48「フライングゲット」で踊ったものの「高校の制服も持ち出したのに出落ちで…」。登場時には笑いを取ったが、あとはすべったよう。ただ、その打ち込む姿には周囲も感嘆した。

 1月に園田前監督の暴力指導問題が発覚し、その後も助成金問題などで揺れる柔道界。騒動後初の国内主要大会に、「自分は早く解決してほしいと思っていた」。南條新監督の新体制になり「私としてはやりやすい」と感じている。

 歓迎会で宣言したのは、「3冠」。来月にはその1つ、世界選手権(8月、ブラジル)の最終選考会となる体重別選手権(福岡)が控える。攻撃性を取り戻した新女王。あと2つの冠も“ゲット”しにいく。【阿部健吾】

 ◆緒方亜香里(おがた・あかり)1990年(平2)9月24日、熊本県宇城市生まれ。小学1年で空手を始め、柔道は松橋中から。阿蘇高、筑波大を経て、今年4月から了徳寺学園に所属。世界選手権11年大会は銀メダル。グランドスラムは11年東京大会も含めて4度優勝。組み手は左。得意技は内股、大内刈り。172センチ、78キロ。