フィギュアスケート元世界女王の安藤美姫(25=新横浜プリンスク)が「母の決意」を強く語った。横浜市内で5日、4月に第1子となる女児を出産したことを公表後、初めて会見を行い近況を報告。関心が集まる愛娘への配慮を求め、「ママさんスケーター」としての有終の美を誓った。父親は公表しなかったが、引退を決めている今季終了後に「きちんとしたい」と述べた。

 母になった安藤。競技者と親としての生活、両輪を回す状況を真摯(しんし)に話し、理解を求めた。すべては4月に生まれた子供のためだった。

 7月1日、テレビ番組を通じて出産を公表した。「このまま隠していると、表現は悪いかもしれないですけど、パパラッチの方に追いかけ回されて、そういった公表(暴露記事)のされ方は避けたかった」。

 公の立場にない娘の顔が露出するのを避けたかった。「未来もある。彼女の素晴らしい人生の始まり」の障壁としたくなかった。「日本は安全と言われるけど、誘拐、殺人もある。守りたいと思って顔を伏せている」と続けた。

 現在、過熱報道に外出もままならない。練習も思うように通えない。そんな時に見る娘の姿を「彼女の力は本当にすごい」と実感がこもった。「疲れて帰ったり、悩んだりしても、彼女がいるから踏ん張って頑張らないといけないと思う。生まれてきてくれたことに感謝したい」という。母の喜びを感じ、競技者としての活力も生まれる。

 娘のため、競技を終えたら父親との関係も動く。非公表を貫くが、「きちんと(競技生活が)終わってから相手の方とはお話をして、きちんとしていくつもりです」と述べた。今季限りで現役を退く。まずは競技者としてやり切り、相手との関係を考える。

 1日に米国から帰国した。フリーの振り付けのためで、依頼先はリー・アン・ミラー氏。10年バンクーバー五輪のフリー「クレオパトラ」などを手がけた人物で、曲名は明かさず「1度使った曲。歴史に残るプログラムにしたい」と期待を募らせる。ショートプログラム(SP)はロシアのナターシャ・ベステミアノワとイゴール・ボブリンのコンビに頼んだ。「声をかけていたコーチに、昨日の朝、返事をいただいて『ノー』だった」と人選で困難な状況もあるが、前に進む。

 復帰戦は関東選手権(10月、新横浜スケートセンター)になる。出産で落ちた体力、筋力は、ジャンプで3種類の3回転を降りられる状態まできた。道は険しいが「両方を頑張りたい」。母とスケーターとして、力をくれる娘のために。【阿部健吾】<弁護士はミス早稲田エントリー>

 会見の壇上、安藤の隣に女性が同席した。今田瞳弁護士で、安藤側が相談している弁護士事務所からの派遣。冒頭、報道陣に対し映像の使用条件などについて述べたほか、会見中に安藤と相談する姿もあった。その美貌も目を引いたが、01年ミス早稲田にエントリーした経験を持つ。この日は他に、男女1人ずつの警備員も同行する厳戒態勢だった。