<フィギュアスケート:東日本選手権兼ソチ五輪第2次選考会>◇3日◇群馬県総合スポーツセンターアイスアリーナ

 ソチに黄色信号だ。女子SPに出場した元世界女王の安藤美姫(25=新横浜プリンスク)が、自己最低点となる41・97点で26人中13位と出遅れた。上位5人までがソチ五輪最終選考会の全日本選手権(12月、埼玉)に進むが、国際大会での実績が乏しい参加選手と競って思わぬ苦戦。昨季の全日本選手権では25位相当の成績となった。4月に女児出産を経た上での挑戦が続くかは、今日4日のフリー次第となった。

 跳べなかった。世界を2度制した安藤自身にも、信じられない光景だっただろう。演技を進めて2つ目のジャンプ。3回転ループの踏み切りで、氷と右足のスケート靴が激しく衝突した。「ガツ!」という衝撃音と観客のどよめきが交錯する中、安藤の体は1回転もできないまま着氷した。判定は1回転ループの回転不足。3回転ループの基礎点は5・1点だが、得点は0・10点と、なきに等しかった。

 迷っていた。先月の関東選手権を終えて、エッジの位置を変えるかどうか、試行錯誤。復帰戦となった9月のネーベルホルン杯(ドイツ)も含めて2試合戦ったが、ジャンプの回転不足が目立った。解消するために、シーズン途中だが改善が急務だった。

 靴底に付けるブレード(刃)の先に氷と接するエッジがあり、真ん中、外寄り、内寄り、どこに付けるかは選手の感覚による。足形にも影響されるが、安藤は少し内寄りに変えることを選択。微調整を加えて、今大会に臨んでいた。結果として、ジャンプの踏み切りにいつもと違う感覚があったのかもしれない。冒頭の3回転ルッツも回転不足で、ステップもどこか躍動感に欠けた。フランク・シナトラの「マイ・ウェイ」を十分に表現できなかったことを、演技後に思わず口元を覆った姿が物語っているようだった。

 得点は自己最低点で13位に沈んだが、全日本選手権に進む5位までとの点数差は5・58点。フリーで転倒などなく滑りきれば、逆転できない数字ではない。本人も課題にする体力面でどこまで回復しているかが鍵だ。

 日本スケート連盟では各地方大会では全ての競技終了まで取材対応をしない慣例があり、この日は安藤も対応しなかった。会場を後にする際には、ファンからの「頑張って」の声に笑顔も見せた。思わぬ苦戦を強いられる状況だが、ソチへの道を閉ざすわけにはいかない。演技後にも笑みを浮かべるような結果が今日は求められる。【阿部健吾】

 ◆安藤がソチ五輪に出場するには

 日本の女子シングルの出場枠は「3」。日本連盟は選考方法として、全日本選手権出場を最低条件とする。優勝で決定。2、3位は、GPファイナルの日本人最上位者と合わせて選考。決まらなければ、同大会終了時点での世界ランク日本人上位3人、ISU(国際スケート連盟)シーズン最高点の日本人上位3人から選考する。安藤は全日本選手権に出場するために予選を戦っており、1次予選の関東選手権は優勝。東日本選手権で上位5人に入れば道が開ける。ただし、現時点ではGPファイナルは参加できず、世界ランク、ISUシーズン最高点で対象になることも難しいため、全日本選手権での優勝を目指している。